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【質問】 血沈、ZTTなどが上昇

 32歳の女性です。7月に初めて日帰り人間ドックを受けて、血沈、ZTTなどの上昇があり、再検査したところ、自己免疫性肝炎と言われました。治療は、今は特に必要ないとのことでしたが、体のだるさなど調子が悪くなったときには、検査を受けるようにとの指示でした。病気について、詳しいことや注意すべき点などを教えてください。



【答え】 自己免疫性肝炎 -抗核抗体を調べてから診断-

徳島赤十字病院 長田 淳一

 まず自己免疫性を説明します。人の身体には自分(自己)以外を排除する能力があります。ウイルスや細菌などの微生物を攻撃し、排除します。しかし、自分の身体を作っている細胞などは自分のものとして攻撃しません。この異物排除機能を免疫能といいます。

 自己免疫性肝炎では、病気のために自分の肝細胞を自分のものでないと判断し、攻撃する状態になっています。検査すると、抗核抗体が陽性となり、自己免疫性肝炎診断の一つの根拠になります。

 肝炎はさまざまな原因(日本ではB型、C型肝炎ウイルスが原因の90%以上)で肝細胞に炎症、壊死(えし)(細胞が壊れ死ぬ)が起こった状態です。

 自己免疫性肝炎では、自分の肝細胞を攻撃(主にリンパ球やリンパ球が作る抗体が攻撃の主役)し、肝細胞は破壊されます。その結果、血液中へ細胞内にあるGOT、GPTなどが流れ出します。採血、検査してGOT、GPTの値が異常だと肝炎があるということになります。壊死の後を線維が補い、肝細胞が新たに作られますが、この行程を繰り返しながら線維が増加し肝硬変へ進行するのが慢性の肝炎一般の経過です。

 自己免疫性肝炎は、昔は若い女性に発病し、短期間で肝硬変に進む予後の悪い病気とされていましたが、日本ではほとんどの患者が中高年女性で、50~60代にピークがあります。経過は緩やかであり、肝硬変への進行はほとんどありません。

 日本肝臓学会で4~5年前に日本中の主な肝疾患の医療施設を調べた結果、初めから肝硬変だった人を除いて、肝炎から肝硬変へ進んだ人の報告はないとのことでした。補足ですが、肝臓がんの合併は、大部分の施設で少数(1~2例程度)ありました。昔は肝臓がんにはならない病気といわれていました。

 この病気は、人種差が大きく、欧米人(アングロサクソン系が主)は20代に発病、3年程度の短期間で急速に肝硬変へ進行する型が約30%あり、若年時がピークになっています。この知識が日本に直輸入され、日本でも若い女性で予後が悪いと言われていたようです。しかし、ヨーロッパでも住民のほとんどがケルト系のサウスウエールズでは若年発症は少なく、日本と似て60歳ぐらいがピークになっています。

 治療はステロイドホルモンが特効薬とされていますが、日本では軽症、非進行性の人が多く、しかも高齢者が多いため、ステロイドホルモンの副作用(骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、糖尿病、高血圧など)が問題になります。肝炎の程度から、ステロイドの必要性が副作用のリスクに見合うかどうかの判断が重要です。

 私は「肝生検」(肝臓組織の細片を採取して顕微鏡で直接肝炎の状態を観察する)を含んだ検査で判断しています。まれな重症例を除いては副作用が少ない飲み薬のウルソを投与、効果が少なければ強力ミノファーゲンC注射併用と、治療効果からも段階的に肝炎の重症度を確かめながら、ステロイド治療の必要性を考え、使うとしても極力、少量投与で治療しています。

 診断はスコアリングシステムという方法による結果を参考にしますが、軽症例が多く、確診よりも疑診、可能性例が多いため、軽い場合は、経過観察も一つの診断手段です。健診でGPTが高く、B型、C型肝炎マーカー陰性の場合、脂肪肝がほとんどですが、肝臓の炎症の指標となるZTTが異常値であることから、二次検査で抗核抗体を調べて自己免疫性肝炎であるかどうかを診断することになります。

徳島新聞2004年9月26日号より転載

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