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【質問】 関節に障害、屈伸できない

 4~5年前より腰が曲がり、ひざ関節の屈伸も、しにくくなりました。最近は特に、動きが不自由になりました。うずくような痛みは伴いませんが、正座が不可能になりました。医師からは骨粗しょう症と診断され、その際「起床直後にコップ一杯の水で服用するように」と、ベネットという白い錠剤をもらいました。半年近く、その薬を飲んでいます。個人差はあると思いますが、どのくらい続ければ、具体的な効果が得られるでしょうか。薬の副作用がないかどうかも心配です。



【答え】 ひざ関節症・骨粗しょう症 -転倒・骨折予防が大切-

ほりべ整形外科 堀部 和好(徳島市南昭和町1丁目)

 ひざの障害と骨粗しょう症の薬・ベネットの服用期間と具体的効果、副作用などについて、まとめてみました。


 【ひざの障害】年配の方の典型的な姿勢のようです。《図》のように、背中が曲がってくると、ひざを伸ばして地面に垂直に立てなくなります。そのためにひざを屈曲して立つことになります。その結果、ひざが十分に伸ばせなくなり、ひざが曲がってきます(屈曲拘縮)。これが、ひざの症状を引き起こす原因にもなります。

 推測すると、すでに変形性ひざ関節症を引き起こしているようです。この点については、整形外科医と相談してください。骨粗しょう症があり、薬を服用中ですが、下肢の筋力低下も当然あると考えられ、転倒や骨折の危険性が高いので、注意してください。

 【ベネット】骨粗しょう症は、骨がもろくなる病気です。骨はコラーゲンの網の中に骨芽細胞がカルシウムなどのミネラルとともに沈着したものです。このようにして、骨は硬い丈夫な組織になり、体を支える柱の役目を果たし、人間が移動することを可能にします。このカルシウムを中心にしたものを骨量といいます。これが減少すると、骨がもろくなり、骨粗しょう症になります。

 骨はこれらミネラルの倉庫のような働きをしていて、血液の中のカルシウムが少なくなると、破骨細胞が骨を融解して血中にカルシウムを放出します。多くなると、カルシウムは骨に沈着します。骨を融解する破骨細胞と骨を作る骨芽細胞の間で、日夜繰り返されています。

 ベネット(ビスフォスネート系薬剤)は、破骨細胞の働きを抑制して、骨量を増加させる薬です。ビスフォスネート系薬剤は現在、日本では3種類が保険で認められています。脊椎(せきつい)圧迫骨折を、服用していないグループの40%くらいに抑制するデータが世界中で認められています。なかなか優れた薬剤です。

 服用時期は、更年期ごろから、高齢者に及びます。また副腎(ふくじん)ホルモンを服用する場合は、骨粗しょう症になりやすいので、最近は、年齢に関係なく服用時から投与する医師もいます。服用期間は、特に副作用がなければ、できるだけ長期、少なくとも3~4年以上の期間が望まれます。また経過により再開されます。

 あなたの場合は、副作用がなければ、今後2~3年は続けてください。腰が曲がってきているので、服用方法をきちんと守ってください。副作用で一番気をつけなければならないのは、薬を確実に早く食道を通過させ、食道炎・潰瘍(かいよう)を防止することです。そのため、コップ一杯の水で飲むこと、服用後は横にならないことを義務付けているのです。

 そのほかの主な副作用は、胃不快感、悪心、便秘、上腹部痛、腹部膨満感などの消化器症状が主たるものです。掻痒(そうよう)症などの過敏症状、肝機能検査値異常などもあり、詳しくはかかっている医師に相談してください。重篤なものは少ないようです。

 骨量は、24カ月(約2年)服用すると、増加が認められる報告が多いので3~4年は服用してください。また、骨の融解の程度を調べる血液・尿の検査(酵素=NTx)では、服用後1カ月で、効果が認められるようです。

 今後、この関係の薬はいろいろと出てくるものと予想されますが、下肢の筋力強化とバランス能力を維持強化し、転倒予防・骨折予防することが大切です。それには、ひざの伸展運動と片脚立ち訓練が有効のようです。詳しくは整形外科の医師に尋ねてください。

徳島新聞2004年2月28日号より転載

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