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【質問】 めまいの症状に悩む

 36歳の女性です。8年ほど前からめまいの症状に悩んでいます。耳鼻科や総合病院で診察してもらいましたが、はっきりせず、町医者で「良性頭位性めまい」と診断を受けました。メニエール病の疑いもあるそうです。最近、2カ月置きくらいに頻繁にめまいが起きるようになりました。薬をのんでいますが、改善しません。車の運転をしてもいいでしょうか。安静にしていたほうがいいのでしょうか。病気について教えてください。



【答え】 めまい -耳石置換法が高い効果-

松浦耳鼻咽喉科医院 松浦 健次郎(小松島市小松島町外開

 重力に逆らって、静止時に「姿勢保持」をしたり、運動時に合目的な「体位維持」を図る機能を、平衡機能といいます。平衡機能は、眼(め)(視覚系)や耳(内耳前庭系)、そして皮膚・筋肉・腱(けん)・関節(浅・深部知覚系)の3種類の異なった臓器からの刺激情報が脳に至り、お互いに脳幹、小脳を介した複雑な連絡により、反射的調節をします。運動時には大脳レベルの随意的(意識的)運動調節にこの反射的調節も関与し複雑なシステムを構成します。

 このシステムのどこかに障害を来したときに「めまい」(自覚的)や「平衡障害」を起こします。

 内耳には蝸牛(かぎゅう)と前庭(三半規管と耳石器)とがあり、それぞれ聞こえ(聴覚)と身体のバランスを保つ働き(平衡覚)の二つの大切な働きをしています。そして、この内耳前庭と眼はそれぞれ独立して機能しているばかりでなく、前庭眼反射といわれる反射機構で、直接的に密接な関係を持っています。

 平衡機能検査には内耳・体平衡・眼運動などの機能検査があります。このうち眼運動機能検査は眼球運動と眼振を検査します。眼振は「めまい」に伴う多彩な特異な眼球の動きで、多くの情報を得ることができます。頭を傾けたり、耳に水を入れたり負荷を加える眼振誘発検査などもあり、最も診断的価値の高い検査の一つです。

 問診も大切で、殊に「めまい」の性状で回転性か、フワフワ・ユラユラする非回転性か、持続時間、頻度、めまい頭位・体位の有無。随伴症状として耳鳴り・難聴、吐き気、嘔吐(おうと)、頭痛や他の脳神経症状(麻痺(まひ)・しびれ・嗄声(させい)・嚥下(えんげ)障害など)の有無。高血圧・動脈硬化・糖尿病・各種ホルモン疾患・感染症・外傷などの合併・既往症の有無などは重要な情報です。

 めまい疾患は、大ざっぱに、内耳由来(末梢性(まっしょうせい)・迷路性)、そして脳幹・小脳を主とした脳由来(中枢性)の二つに分けることができます。この末梢か中枢かの鑑別が問診・検査の大きな目的といえます。

 日本めまい平衡神経学会が診断基準化提案している、めまい疾患名だけでも18疾患あります。このうち、末梢内耳性および内耳隣接の2疾患を加えると、末梢性疾患は全体の3分の2を占めます。発生頻度から見ても、最も多い良性発作性頭位めまい症・メニエール病を含めた末梢性内耳性めまいが60~70%を占め、中枢性めまいが約10%前後です。残念なことですが、全体の約25%は原因不明の「めまい症」とされています。

 良性発作性頭位めまい症は、耳石器内の石が半規管内に脱出したと考えられ、数年前から治療に耳石置換法という理学療法が90%にも及ぶ高い有効率から急速に普及してきています。ただし正確な診断とどちらの耳に障害があるかを決める必要があり、ある程度熟練した専門医の診察が必要です。

 メニエール病は、迷路の内リンパ水腫と考えられており回転性めまい、難聴、耳鳴りの3つの症状を繰り返すことが多く、発作ごとに難聴は進行する傾向もあり、吐き気や嘔吐を伴うことが多いのです。治療は内リンパ液の性状を改善する目的や水腫の減荷目的の注射、内服薬中心の治療が行われます。ストレスなどの影響も大きく安定剤・抗不安剤は欠かせない処方です。しかし、治療に抵抗し長期間発作を繰り返すことも多く、QOL(生活の質)より内リンパ嚢(のう)開放などの手術的治療も考慮されます。そのほか、他科合併症にも注意が必要です。

 最後に長期にわたるめまい疾患のQOLですが、末梢性めまい、特に良性発作性頭性めまい症などの場合は適度な運動はしてもよいのですが、車の運転には頭・首の運動に伴うめまいの誘発も多く、程度にもよりますが、控えた方がよいでしょう。

徳島新聞2004年1月25日号より転載

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