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【質問】 子宮摘出後膣に異常

 58歳の女性です。15年前に子宮筋腫で子宮摘出手術をしました。先日、婦人検診があり、15年ぶりに受診しました。がんではないが、ほかの一般婦人科疾患で「トリコモナス膣炎(ちつえん)」の疑いがあり、医師の診察を受けるようにとのことでした。どんな病気なのでしょうか。過去の手術と、何か関係があるのでしょうか。治療方法を教えてください。



【答え】 トリコモナス膣炎 -病原虫が原因、局所療法で効果-

沖津産婦人科 沖津 治(徳島市伊月町2丁目)

 「トリコモナス膣炎」とは、トリコモナス原虫によって発症する膣炎です。大抵はやがて、黄色の泡立つような下り物(帯下=おりもの)が増え、さらに膣や外陰部がかゆくなり、時にはやけるような感じが出てきます。もっとも相談者は、このような自覚症状がなく、検診によって偶然、トリコモナス原虫が発見されたのでしょうが、やがて帯下増量とか、前記の症状が出るとも考えられますので、婦人科専門医で相談してください。

 過去の手術との関係は、相談者の手術の場合、子宮摘出術ですから、常識的には関係はないと考えていいと思います。治療方法についてですが、とにかく婦人科専門医に診てもらうのが最適とお勧めします。それは大学病院とか、その他の大病院という意味でなく、その地区の婦人科の開業医の先生で十分です。婦人科医は、相談者の自覚症状や既往歴を尋ね、検査・加療をします。

 治療法には<1>局所療法<2>内服療法<3>[1]と[2]との併用療法<4>配偶者あるいはセックスパートナーの加療-などがあります。局所療法に使う膣錠、内服療法の内服剤などは、その専門医ごとの考えもありますし、症状によっての使い分けもありますので、ここで薬名を述べるのは控えます。

 膣トリコモナスは、膣内を好適な住居とする白血球より少し大きな原虫ですが、女性では膣の近接臓器である直腸、膀胱(ぼうこう)、尿道、外陰部からも見つけることができますし、男性では、前立腺、尿路内の寄生も認められています。

 従って、女性においては、自分自身の近接臓器からの移行もあるし、男性からの感染というか、移行も十分考えられるのです。米国では、性交に伴う疾病の一つとして早くから取り上げられておりましたし、日本でも、戦後、米国医学の導入により、このことが強調されるようになりました。このため治療法の<4>の意味が理解できると思います。

 そのほか、一般的な予防法の一つとして、大衆浴場(温泉も同様)の場合、下着は、直接かごや脱衣棚に入れないで、小さなビニール袋でも用意するようにしたらいかがでしょうか。

 膣トリコモナスは、鞭毛虫類(べんもうちゅうるい)に属する原虫で、1836年、ドンネによって初めて発表され、その後の研究者も無害な膣寄生虫と考えていました。その後、1916年、ホックネによって病原性を指摘されてから、多くの研究が始まりました。日本では、33年以降、研究が盛んになり、戦後、効果のある抗トリコモナス剤が開発され、本症の加療に成果が見られるようになったのです。

徳島新聞2003年8月10日号より転載

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