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【質問】 子宮が下がったままですが

 58歳の女性です。子供は2人産みました。昨年秋、がん検診を受け子宮が下がっていると言われたのでリングを入れました。30分くらいのウオーキングや、畑仕事をすると、おりものが増え、かぶれ、出血、尿の回数が多いなどの症状があります。異常はないとのことですが、リングを入れた後も、子宮は下がっています。ひと回り大きいリングを入れるべきか、子宮を摘出する方がいいのか迷っています。手術をした場合は、何日くらいの入院が必要でしょうか。



【答え】 子宮脱 -重症の可能性手術を-

徳島市民病院 産婦人科 東 敬次郎

 お尋ねの病気は子宮脱であると考えられます。ここでは子宮脱の原因、症状、治療法について説明します。

 子宮は骨盤のほぼ中央にあり、周囲の組織によって支えられています。この組織を子宮支持装置と呼び、子宮に付着しているひも状の組織(靱(じん)帯)と子宮を下から支える筋肉(骨盤底筋群)の2つがあります。更年期以降になりますと、これらの組織が緩んでくるために、子宮が下がり、膣(ちつ)の入り口から出てくる場合があります。これを子宮脱と呼んでいます。

 最初は下腹部の違和感や子宮の下垂感程度であることが多いようです。やがて排便・排尿時に膣の入り口に硬い腫瘤(しゅりゅう)が触れるようになります。さらに進行すると、脱出した子宮とその周囲の膣粘膜の乾燥、出血、ただれ(潰瘍(かいよう)形成)、感染、おりものの増加、歩行困難などの症状が出てきます。また膀胱(ぼうこう)が引きずられて出てくると頻尿、尿失禁、直腸が出てくると排便困難や便秘を起こします。ここまで症状が悪化すると手術が必要です。

 子宮脱の治療には、手術やペッサリー療法が用いられています。それ以外にも補助的治療法として薬物療法(女性ホルモンであるエストロゲン剤の服用)や体操(骨盤底筋群の訓練)がありますが、これだけでは十分な治療は困難です。

 <1>手術療法

 通常は、出てくる子宮を摘出(腟式単純子宮全摘術)するとともに、緩んでいる膣壁を引き締めるための手術(膣会陰(えいん)形成術)を併用します。これらの手術により大部分の患者は完治すると考えられます。しかし、高齢などの理由で手術をできるだけ簡単にする必要がある場合は、膣を閉じてしまう手術(膣閉鎖術)も行っています。ただし、膣閉鎖術は術後に性交ができなくなることと、術後に子宮がんの検診が困難になることからごく一部の患者にだけ行っています。

 <2>ペッサリー療法

 ペッサリーは熱湯で変化する円形から楕(だ)円形の合成樹脂でできており、大きさも患者に合わせて数段階あります。ペッサリーは膣の一番奥に挿入することで、子宮が下がってくるのを防止する器具です。手術を要しないことから使用される場合も多いようです。

 また、高齢の場合や、手術自体ができないような別の病気がある場合にも用いられます。ただ、ペッサリーは膣粘膜を常に圧迫することから、長期間の挿入により腟炎が起こっておりものが増加したり、膣粘膜に障害が起こって潰瘍を作ったり、膣粘膜から外れなくなったりすることがあるようです。そのため、長期間使用する場合は、3カ月ごとに通院し、これらの異常がないかチェックする必要があります。

 比較的軽症の子宮脱はペッサリー療法が有効ですが、根本的な治療とはいえず、定期的なチェックを受ける必要もあります。ペッサリーを入れた後も子宮がさらに下降していること、かぶれや出血があること、頻尿があることから病状は重症化している可能性があります。

 現在の主治医と手術について相談してはいかがでしょうか。なお、通常、手術の後は10日程度で退院できると考えてよいと思います。

徳島新聞2003年6月29日号より転載

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