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【質問】 おならを我慢するとおなかが鳴る

 24歳の女性です。中学生のころから、おならを我慢すると、おなかが「ボコ」「グー」などと鳴ります。大きな音で、周囲に聞こえるので、とても恥ずかしいです。我慢しようとしても、止められません。食物繊維や乳製品を積極的に食べ、食生活には気を付けています。ときどき、おなかの左側が痛くなるのですが、大腸の中をカメラで見て診察してもらった方がいいでしょうか。仕事柄、座っていることが多いのも影響しているのでしょうか。週末しか休みがなく、なかなか病院へも行けません。



【答え】 腹鳴 -生活リズム整え自然に-

阿南共栄病院 副院長 井上 秀夫

 私たちは食事をしたり、会話したりするときに、空気をのみ込んでいます。特に早食いの人や早口でしゃべる人は、より多くの空気をのみ込んでいます。また、汁物やめん類をすする食べ方も、空気をのみ込んでいます。飲食物にも空気が含まれています。のみ込んだ空気は胃にたまり、一定の圧力になると体外にゲップとして出ます。

 ところがゲップを我慢すると胃の中の空気は奥の腸へ移動します。小腸から大腸へ空気が移動して最後に肛門(こうもん)から体外へ排出するのが、おならです。ただし、小腸ではほとんどの空気は血液中に吸収され、肺で呼気となって排出されています。また、運動で、はく息の量が増えると、腸内の空気が減少します。便秘になると悪玉の腸内細菌が増えて、腐敗発酵により空気(ガス)が増え、悪臭のおならとなります。

 では、便秘の解消方法をどうすればいいかですが、まず規則正しい生活をすることです。

 第一に朝食をきちんと取ること。そのためには、起床から出勤時までに、時間的余裕を持たなければなりません。夜ふかしは禁物で、睡眠時間を確保することも必要です。

 朝食を取ることによって、夜間休んでいた大腸は活動を再開します。食べ物が胃に入って膨らむと、それが刺激になって便を直腸方向へ送り出す運動を始めます。便意がなくても、朝食後にトイレに行く習慣を付けます。また、トイレに行きたくなれば、我慢せずに行くことが重要です。繰り返し排便を我慢していると、便意を感じにくくなって便秘を助長し、大腸が長くなるという悪循環で、便秘が一層頑固になるのです。

 運動不足も、大腸の動きを抑え、便秘傾向になってしまいます。腸管運動は自律神経で支配されていますので、自分が意識して動かすことはできません。

 おなかの中で音がする腹鳴は、腸の空気と、消化液と、食物の混ざった液体とが、腸管運動によってかき混ぜられるときに起こります。ボトルに水がいっぱい入っているときは、ボトルを振っても音は鳴りませんが、水と空気が半々に入っていると音が聞こえてくるのと同じ原理です。

 腸管運動を自分で止めることはできません。従って腹鳴を意識して止めるのは不可能です。おならを我慢すると、おなかが鳴りやすくなるのは自然現象です。また、腹痛の原因はいろいろありますが、おなかに空気がたまることによっても起こります。そして、そのときの腹痛はおなかの左側で起こることが多いようです。

 相談者は年齢が24歳ですので、発熱、体重減少、血便がなければ、大腸カメラ(内視鏡)検査を受ける必要はないと思われます。規則正しい生活を心掛け、きちんと朝食を取り、朝食後にトイレに入り、便意を感じたときには我慢せず、またゲップも我慢しないようにしてください。

 運動不足も一因のようです。できるだけ動くように心掛けてください。例えば、エレベーターは使わず、階段を利用することも一つの方法です。私自身も実行中です。それぞれの環境で工夫してみてください。そのほか、ストレスも腸管運動障害をもたらすといわれています。長く続くようなら土曜日診療している医院、診療所で受診してください。必要であれば、専門の病院を紹介してもらえると思います。

徳島新聞2003年6月15日号より転載

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