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【質問】 子どもの右足指裏のイボについて

 子ども(6歳男児)の右足の指の裏にイボができています。先端に黒い点があり、皮膚がよれてざらざらしています。痛みはないようですが、本人は気にしています。先日、素足で遊んでいたときに、イボの付け根が割けて、少し血が出ました。暑い季節を迎え、ソックスを履かずに砂場などで遊ぶことも多くなりそうですが、ばい菌が入ったりする心配はないでしょうか?皮膚科で診療してもらいましたが、「治療に対して怖がって泣いているのに、無理に取ったりしなくていい。大きくなれば自然に治ってくる」と言われました。このまま様子を見ていて大丈夫でしょうか?治療するとなると、やはり痛みを伴うでしょうか?



【答え】 イボ -無害な外用剤の使用から-

斎藤皮膚泌尿器科 斎藤 一夫(徳島市中通町2丁目)

 相談の文章から、皮膚科の先生の診察を受けているようですので、間違いなくイボと思われます。

 イボは、正確にはパポバウイルス科に属するヒト乳頭種ウイルスの感染によって生じる良性上皮性の腫瘍(しゅよう)(以下ウイルス性イボ)と、ポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルスの感染による水イボがあります。イボとよく似た足の裏の病変としてはウオノメ(鶏眼)あるいは、タコがあります。

 ウイルス性イボの代表的病型としては

 ▽尋常性疣贅(ゆうぜい) エンドウ大までのほぼ円型で皮膚面より半球状に盛り上がった硬いできもので、手や足の指などによくできます。足底にできると体重がかかるため、ほとんど皮膚面から隆起しない状態となります▽ミルメシア 中央がやや陥没してアリ塚様の型になります。手のひらや足の裏にできて、体重がかかると痛みがあります

 ▽扁平(へんぺい)疣贅 顔や手の甲に米粒大の扁平なできものが多発します。また、青年期によくできるため青年性扁平疣贅とも呼ばれます

 ▽尖圭(せんけい)コンジローム 外陰部などに生じるもので、乳頭状あるいは鶏の冠のような外観をしています。

 皮膚科の医者のウイルス性イボに対するコンセンサスは大体以下のようにまとめられると思われます。<1>自然に治癒することがある<2>したがって瘢痕(はんこん)を残すような治療は避ける<3>他人には余りうつらないが、自家接種して多発することがある。

 ここで<1>の自然治癒は、どのくらいあるのか報告例を紹介します。静岡県の平松皮膚科院長の平松洋先生の報告によると、手のひらと足の裏のウイルス性イボ554例のうち、自然治癒2例、外用剤の暗示効果と思われるもの33例、外用剤の暗示効果に加えておまじないの力がプラスアルファとして働いたもの2例、その他4例で、計41例の自然治癒および自然治癒もどきがあったそうです。

 <2>の瘢痕を残さないような治療としてはいずれも多少の痛みを伴いますが

 ▽凍結療法 液体窒素(マイナス195度)を含ませた綿棒をイボが白くなるまで数秒当てることで迅速凍結、緩徐解凍を繰り返し、これを1~2週ごとに治るまで行う方法で、皮膚面より盛り上がった尋常性疣贅、ミルメシアなどに有効です▽電気焼却法 局所麻酔後に瘢痕を残さないように軽く浅めに行います

 ▽抗腫瘍剤の局所注射 抗腫瘍剤のブレオマイシンなどをイボに注射する方法で、手のひらや足底などの凍結療法では治りにくいイボに有効です。

 いろいろ述べましたが、確実に治して自家接種して多発するのを防ぐには、凍結療法・抗腫瘍剤の局所注射などで治療します。また痛みのない治療を希望される場合には、無害な外用剤などを使用しながら自然治癒を期待するという選択肢も考えられるでしょう。

徳島新聞2003年5月4日号より転載

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