徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 便に鮮血、いぼも

 痔(じ)について教えてください。便秘がちなのですが、最初に硬い便が出て、その後に水風船が割けたような感じで便器の周りに血液が飛び散ります。病院で大腸内視鏡検査をしてもらったところ、「腸はきれい」と言われました。今後、どのような検査をすればよいのでしょうか?また、便の後、肛門(こうもん)からいぼのようなものが飛び出てきますが、大丈夫でしょうか?心配しています。



【答え】 痔 -肛門鏡で痔核の確認を-

大塚外科・内科 大塚 雅文(徳島市川内町平石)

 誰もが人に言えない悩みを少なくとも二つや三つは持っていると思います。健康に関する悩み、とりわけ肛門にかかわる心配を持っている人は少なくないでしょう。

 ある日、突然、トイレで真っ赤な出血に遭遇して、がくぜんとなります。病院へ行くのは勇気が要ります。人間が2本足歩行を開始したときから痔とは切っても切れない関係が出来上がりました。日本人の3人に1人が何らかの痔に関する悩みを持っているようです。

 一般的に痔といわれるものは痔核(じかく)(いぼ痔)、痔瘻(じろう)(穴痔)、裂肛(れっこう)(切痔)のそれぞれ独立した疾患の総称ですが、質問の男性は痔核と思われます。その主な症状は出血、痛み、脱肛です。

 痔核は主に上直腸静脈叢(そう)に発生する内痔核と、下直腸静脈叢に発生する外痔核とに分類されます。質問者は出血が中心で痛みは訴えていません。一般に内痔核の領域には知覚神経終末がなく、痛みを感じないことが多いのですが、脱肛、痔核嵌頓(かんとん)を引き起こしたときは肛門痛を訴えることもあります。

 また、外痔核を合併することも多く、こちらは痛みが主な症状です。特に血管が裂けて内出血を起こしたときは、肛門に硬いしこりが触れ、2~3週間持続することがあります。これは血栓性外痔核というもので、運動、飲酒、便秘、下痢などが引き金になることが多いようです。質問者の「イボみたいなもの」は、この血栓性外痔核、あるいは内痔核による脱肛に起因するものと思われます。

 痔核の発生のメカニズムの主体は、肛門管付近の粘膜と筋層の間にある静脈叢のうっ滞であると考えられており、その原因として便秘、下痢、スポーツ、長時間同じ姿勢を取る職業(運転手など)、妊娠・出産、食物(香辛料、アルコールなど)、全身性疾患(肝硬変、精神神経障害など)の関与が言われております。

 一般に痔からの出血は鮮血ですが、逆に鮮血が出たからといって必ずしも痔によるものとは限りません。質問者は大腸内視鏡検査を受けて「腸はきれい」と言われているので、今回の出血は痔核が原因と考えてよいでしょう。ただ、大腸内視鏡検査では痔核を正確に描写しにくいので、肛門鏡あるいは直腸鏡で確認してもらうことを勧めます。

 最後に治療法ですが、基本的には軟こう、座薬などの外用薬や内服薬による保存療法が第一選択です。それでも出血が続くとき、痛みが改善しないとき、手で押し込まなければ戻らないような脱肛のときなどには外科的治療が必要となります。しかし、程度の軽い場合、全身状態が不良で手術困難な場合などは硬化療法、冷凍療法、ゴム輪結紮(けっさつ)を選択することもあります。

 痔の手術は痛いものと思われていますが、最近では「PPH法」という器械吻合(ふんごう)を用いた新しい方法もあり、入院期間も以前に比べ短縮の傾向にあります。身内にも相談できず、人知れず悩んでいる人も、ぜひ専門医に相談することを勧めます。

徳島新聞2003年3月2日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.