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【質問】 自然排石後の注意点は?

 42歳の男性です。5カ月前に膀胱(ぼうこう)炎のような症状がありました。膀胱結石ということでしたが、石は自然に出たようです。結石の原因と日常生活の注意点について教えてください。



【答え】 尿路結石 -飲水と適度な運動必要-

宇都宮皮膚泌尿器科 院長 宇都宮 正登(徳島市吉野本町1丁目)

 尿路にできる結石は、部位によって腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石に分類されます。戦後の日本においては、上部尿路結石(腎結石、尿管結石)の発生が飛躍的に増加したものの、下部尿路結石(膀胱結石)は比較的少なくなっています。

 膀胱にできる膀胱結石は、泌尿器科疾患(前立腺肥大症、神経因性膀胱など)がない限り、できることはまれで、できた場合、かなり大きくなりますので自然排石することはまずありません。よって相談の男性の症状は、小さな尿管結石の下降に伴う下腹部痛で、自然排石したものと考えられます。 

 しかし、何らかの泌尿器科疾患の存在、あるいは腎結石が残存している可能性も否定できませんので、一度泌尿器科専門医で精査をしておくことを勧めます。

 治療としては、昔のように開腹手術が必要なことは少なく、高度医療機器の発達により、腹部を切らずに破砕摘出することが可能です。また、カルシウム結石は溶かすことができませんが、尿酸結石、シスチン結石などは内服治療で溶かすことができます。

 原因としては、尿路結石の種類にもよりますが、80%以上を占めるカルシウム含有結石(シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石)においては、原発性副甲状腺機能亢進(こうしん)症、特発性過カルシウム尿症、過シュウ酸尿症、腎尿細管性アシドーシスなどが考えられます。しかし、30%以上は原因を特定できません。

 また、痛風などに伴う尿酸結石、特殊な薬剤(一部の緑内障の薬)などによる結石もあります。小児結石は極めてまれですが、小児結石の原因としては何らかの代謝性疾患(シスチン尿症など)が考えられます。また、戦後の上部尿路結石の増加は、生活の豊かさに伴う動物性タンパクの過剰摂取が原因と考えられています。

 尿路結石の予防としては、動物性タンパクを取りすぎないよう、バランスのとれた食生活と、十分な尿量を得るための飲水と適度の運動が必要でしょう。ビールが飲めると喜んでいる患者さんもいますが、ビールの麦芽が結石を作りやすいのでほどほどにしてください。

 また、以前カルシウムが結石の犯人といわれたことがありましたが、適度のカルシウム摂取は腸管からのシュウ酸吸収を抑え、結石予防に有効です。カルシウムの必要以上の取り過ぎは好ましくありませんが、1日のカルシウム必要量約600ミリグラム(ちなみに牛乳100ミリリットルには100ミリグラムのカルシウムが含まれる)は取るようにしましょう。

 さらに「結石は夜作られる」といういう言葉があるように、尿が濃縮する夜は注意が必要で、夕食時に多めの水分を取ることがポイントです。

 最後に尿路結石は、男性の100人に9人、女性の100人に4人が一生に一度は経験する病気ですので、日ごろから尿路結石を作らない生活態度が重要です。

徳島新聞2002年8月18日号より転載

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