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【質問】 便に血・・・検査に不安

 60歳代の男性です。1カ月ほど前から時々便に血が混じるようになり、胃腸科を受診したところ、医師から大腸内視鏡検査を勧められました。ところが、この検査を受けた友人に、「事前に大量の下剤を飲まなければならないし、検査中に痛みもあって、とても苦しかった」と聞かされました。病気の早期発見のためには受けた方がよいと思うのですが、なんとか苦痛を伴わずに検査できる方法はないのでしょうか。



【答え】 大腸内視鏡検査 -工夫と改善で痛み軽減-

鶴岡内科胃腸科 院長 鶴岡 政徳(板野郡藍住町東中富)

 大腸は大便を作りためておく所です。全長は160~180cmあり、複雑に屈曲しています。このことが大腸検査を難しくしています。

 大腸検査の苦痛の原因には、大きく分けて検査の前処置(大便を排せつして、大腸内をきれいに洗浄すること)によるものと、内視鏡の操作によるものがあります。安全で正確に検査するためには、前処置は非常に大切で、前処置が十分に行われていると、続いて行う内視鏡検査が楽になります。しかし、前処置の際に飲む腸管洗浄剤の量が多いことと、味の悪さに患者さんは悩まされています。

 現在、一般に行われている前処置の方法は、検査の当日、腸管洗浄剤として1.8~2リットルの特殊電解質液を飲む方法が主流です。最近、同じ量のクエン酸マグネシウム製剤を飲む方法も増えてきました。いずれも前日は普通食で、当日のみ絶食です。特殊電解質液は味がしょっぱくてまずいので嫌がられるようです。クエン酸マグネシウム製剤はスポーツ飲料のような味で少しは評判がよいようです。いずれにしても大量の腸管洗浄剤を飲まなければならないのが問題です。

 このため前日から普通食を検査食に変えたり、下剤を服用したりすることで、当日飲む洗浄剤の量を少なくする工夫がなされているようですが、いま一歩のようです。

 最近になって、前者同様に当日のみ絶食で、胃腸管運動促進剤の併用により、従来の半分に近い1リットルのクエン酸マグネシウム製剤を飲むだけで、排便時の腹痛もなく大腸内をきれいに洗浄する方法も行われるようになりました。

 次に、検査中の内視鏡操作による痛みについてお話しします。

 実際の大腸の形は、解剖図に描かれているほど単純ではありません。狭い腹腔内に蛇がとぐろを巻いたように複雑に蛇行しながらつながっています。このため、内視鏡を挿入すると、おなかの中でループ(湾曲)を作り、周囲の臓器や腹壁を圧迫して患者を苦しめます。これが検査中の痛みの大きな原因となります。

 このループを作らせない、あるいはできても大きくしないためにライトターン方式が採用されています。この方式は、内視鏡を操作する際、右にひねりながらループを解消して内視鏡を真っすぐにする方法です。

 さらに新しい方法として最初から内視鏡を真っすぐにして挿入する軸保持短縮法も考案され、利用されています。いずれも内視鏡のループが解消されることで痛みもなくなります。

 このほか、内視鏡の太さ、硬さも検査時の苦痛に関係があるようです。内視鏡の改良の進歩は目覚ましく、細くて硬さを無段階に調節できる可変内視鏡も作られています。

 このように患者さんに与える苦痛を少なくするために、腸管洗浄剤の減量、内視鏡操作の工夫、内視鏡の改善がなされており、大腸内視鏡検査は以前に比べて格段に楽になっています。積極的に内視鏡検査を受けられることをお勧めします。

徳島新聞2001年11月4日号より転載

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