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【質問】 精液に血が混じる

 76歳の男性です。精液に血が混じるので睾丸(こうがん)のがんではないか心配しています。性病などは患ったことはありません。放っておいても自然に治るのでしょうか。病名や治療法を教えてください。



【答え】 血精液症 -特発性なら様子みる-

徳島市民病院 泌尿器科診療部長 横関 秀明

 睾丸のがんは、一般に精巣腫瘍(しゅよう)といいますが、この病気で精液に血が混じる症状(血精液症)が出ることはありませんから、精巣腫瘍の心配はありません。従って主に血精液症について説明し、精巣腫瘍は概説にとどめます。

 血精液症は、年齢にかかわらずみられますが、30歳から40歳代の成人に多いようです。血精液症以外に症状がなく、明らかな原因が見つからない特発性と考えられる場合が六割近くを占めます。検査の結果、特発性と診断されれば治療の必要はありません。経過をみて、将来他の症状が出てくれば、その時点で再検査を受ければよいと思われます。

 何らかの疾患があって起こる場合は、二次性の血精液症になります。これは、尿路性器の疾患や全身性の疾患が原因で発生するものです。全身の疾患では、高血圧や肝臓病などが考えられます。以下、尿路性器の疾患について説明します。

 精液は精子と、前立腺や精嚢腺(せいのうせん)からの分泌物から成り立っていて、この精液の通過する経路、すなわち前立腺、精嚢腺、尿道などの疾患により血精液症をきたすことがあります。

 これらの臓器の疾患としては炎症、腫瘍、結石などが考えられます。このうち前立腺、精嚢腺の炎症による場合が多いといわれています。前立腺結石がみられることもあります。また頻度は少ないのですが、尿路の結核や前立腺、膀胱の腫瘍も念頭に置く必要があります。

 最初にも述べたように、陰嚢内の病気で血精液症が起こることは極めてまれであり、睾丸の病気は除外してもよいと考えられます。

 診断のための検査について説明します。まず、問診により症状の経過や既往歴を聞き、診察では、尿道口、精巣、精巣上体、前立腺の視診や触診を行います。検尿、精液検査、超音波検査(腹部あるいは経直腸的)などで先に述べた疾患の有無を究明していきます。その他必要に応じてレントゲン検査やCT検査を行うこともあります。

 あなたの年齢は76歳であり、前立腺癌(がん)の有無を調べておく必要はあります。一度、泌尿器科専門医での検査を受けられるようお勧めします。

 治療については、特発性の場合は必要なく、経過観察すればよいと思われます。二次性の場合はそれぞれの病状に応じて治療を行うことになります。

 次に精巣腫瘍についてですが、主症状は睾丸のはれです。痛みは伴わないことのほうが多く、徐々に大きくなっていきます。大部分は悪性ですので、睾丸のはれに気づけばすぐ専門医を受診してください。乳幼児期と青壮年期に好発します。陰嚢水腫、そけいヘルニア、精巣上体炎などとの鑑別が重要です。

徳島新聞2001年7月8日号より転載

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