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【質問】 リンパが腫れて発熱

 小学6年生になる息子が1年生だった秋、突然夜中に左わきが痛くて腕が上がらないと泣き出しました。見るとリンパが腫(は)れ、2日後には右首のリンパも腫れ、38度まで発熱しました。総合病院で検査の結果、以前BCG接種を受けた影響ではないか、ということで軽い結核の薬を服用、点滴を受けて2週間で退院しました。3日後、熱とリンパの腫れが再発。リンパは卵大にまでなり、リンパ節生検を予定していましたが、そのうちに治まり、生検は結局実施しませんでした。ところが昨年秋になって、左首のリンパが腫れ、熱も出たため、別の病院で検査したところ、壊死(えし)リンパ節炎と診断されました。この病気は悪い病気でなく、いつかは治ること、抗生物質は効かないので痛みが我慢できないときはステロイド剤を使うこと、白血球が減ることなどを説明されました。病気について詳しく教えてください。



【答え】 亜急性壊死性リンパ節炎 -免疫不全伴う恐れも-

藤岡小児クリニック 院長 藤岡 仁(徳島市昭和町8丁目)

 お尋ねの壊死リンパ節炎という病名に一番近い病気が亜急性壊死性リンパ節炎ではないかと思いますので、この病気についてご説明します。

 本症は4歳から75歳まで幅広くみられ、比較的若年層に多い傾向がありますが、決して小児に多いわけではありません。男と女では1対3の割合で女性に多い病気です。

 症状は発熱、リンパ節の腫れ、そのほか皮膚の発疹(ほっしん)があります。38度以上の発熱が1週間も続き、風邪のような症状を伴います。熱は1カ月近く下がらないこともあります。リンパ節の腫れは、風邪のような症状の後に比較的早く起こることが多いようです。体の表面に近いリンパ節の腫れは、小指の頭大までのものが体の片側、ときには両側にみられ、それらの過半数は痛みを伴います。

 リンパが腫れる部位は、首のリンパ節が圧倒的に多く、次いでわきの下のリンパ節などです。リンパ節の腫れは主に1個で、いずれも周囲との癒(ゆ)着はありません。発疹は一過性で、出る時期は一定していないようですが、高熱が続くとき、症状の強い場合に多く見られます。そのほか扁桃(へんとう)が腫れることもしばしばあります。

 ほとんどの症例で、末しょう血の白血球が減る傾向にあり、減った状態は数日から数十日続きます。しかし症状が回復するにつれ、正常値に戻ります。また、肝機能の働きを示す酵素GOT、GPT、赤血球の破壊の程度を示すLDH(乳酸脱水素酵素)のうち、特にLDHの上昇や、赤沈の進行、血中の炎症を示すCRPの上昇をみることもありますが、いずれも一過性です。その他、がんを誘発することのあるEBウイルスなどの抗体価が上昇する例もみられます。

 本症の原因は今のところ不明です。血清学的には原虫のトキソプラズマや、エルシニア菌、種々のウイルス抗体値が上昇したという報告のほか、アレルギー説、局所の異常免疫反応説などさまざまですが、結論は出ていないようです。

 診断は、前述したような特徴のある臨床症状、検査などによって可能ですが、悪性リンパ腫、そのほかの疾患に伴うリンパ節炎と見分けるためには、組織の一部を取るリンパ節生検が必要となります。

 治療ですが、一般的に抗生物質は効かず、ステロイド薬や消炎鎮痛剤による対症療法しかありません。ただし一過性の免疫不全状態を伴うことが多く、細菌感染などの二次感染に対する予防、治療が重要となります。

 ほとんどの例では、1~3カ月でほぼ治り、治療後の経過は良好ですが、まれに家族内(兄弟や親子)の発症例や再発例もみられます。再発後に血球貧食症候群(HPS)を併う例もあり、再発を繰り返すときには注意が必要です。いずれにしても主治医に定期的に経過観察していただくことをお勧めします。

徳島新聞2001年2月4日号より転載

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