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【質問】 前立腺手術後、勃起せず

 60歳半ばの男性です。3年前に前立腺(せん)肥大症で、内視鏡による手術を受けました。その後遺症のためか、以来、全く勃起(ぼっき)しなくなりました。74歳で同じ手術をした知人は、何の支障もなく、楽しい夫婦生活を送っているそうです。「できるだけ早く再手術を」と知人が勧めてくれるのですが、手術で勃起力は回復するのでしょうか。知人のような夫婦生活を送るためには、どのような治療を受けたらいいのでしょうか。



【答え】 勃起障害 -機能・器質性に分類-

宇都宮皮膚泌尿器 院長 宇都宮 正登(徳島市吉野本町)

 前立腺肥大症の内視鏡手術は、おなかを切らずに肥大した前立腺内腺を尿道から内視鏡を用いて切除し、尿の流れをよくするものです。骨盤内にある前立腺の外側に沿って存在する勃起をつかさどる神経は、この手術で損傷されることは基本的にありません。よって、ご相談の症状は手術による後遺症とは断定できません。

 しかし内視鏡手術後、1割程度の人に勃起障害(Erectilc Dysfunction=ED)が起きると報告されており、前立腺が勃起に関与している可能性が指摘されています。しかし、EDには多分に精神的な面がありますので、「手術はしたけど、勃起に関する神経は大丈夫なんだ」と理解することも大事なことです。

 勃起は、副交感神経と交感神経による自律神経に支配され、EDは機能性(心因性、精神病性ほか)の場合と器質性(神経、内分泌、血管障害ほか)の場合に分けられます。これを客観的に分類することが大切ですので、まず泌尿器科の専門医にどちらに属するかを診断してもらってください。

 器質性EDの場合、その原因となっている疾患(たとえば糖尿病)の治療により改善がみられるはずです。機能性EDの場合、心理療法などが必要になります。いずれの場合も、これらのほかに次のような方法がありますので、主治医とご相談ください。

 薬物療法 

 わが国でもバイアグラが使用できます。非常に効果的ですが、ニトログリセリンなどと同時に使うと過度の血圧低下を招いて危険ですので、医師と相談の上、使用してください。保険は適用外です。

 陰圧勃起補助具

 欧米では最も使用頻度の高い方法で、プラスチック製の円筒に陰茎を挿入し、備え付けのポンプにより陰圧にして勃起状態にします。痛みや副作用など、体への悪影響が極めて少ない大変便利な方法ですが、器具が十万円程度します。

 陰茎海綿体注射

 欧米で広く行われており、プロスタグランディンなどの薬剤を直接海綿体に自分で注射し、勃起を促す方法です。日本ではあまり一般的ではありません。ただ、数回の注射で勃起を改善させることもあります。

 陰茎プロステーシス

 バイアグラをはじめ、すべての保存療法が無効な症例に対して、最後の手段として行われます。陰茎海綿体にシリコン製の棒状物を二本挿入します。この場合、入院して麻酔下での手術となります。保険は適用されません。

 最近、直接勃起を誘発するさまざまな薬剤が開発されてきていますので、今後さらに効果的で安全な内服薬が使用できるようになると思います。EDは加齢の影響もありますので、主治医と十分ご相談ください。

徳島新聞2000年11月5日号より転載

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