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【質問】 激しいかゆみと色素沈着

 30代の女性です。数年前に内股(また)の付け根から陰部にかけて激しいかゆみと、ほとんど真っ黒といってもいいような色素沈着が見られるようになりました。皮膚科を受診したところ「タムシ」との診断。外用薬を出されました。症状はあまり改善されず、とくに汗ばむ時期になると、かゆくて仕方ありません。最近、水虫、タムシによく効く飲み薬が出たと聞きましたが、どこで購入できるのでしょうか。このような薬で完全に白癬(はくせん)菌を殺せて、副作用はないのでしょうか。また、タムシによる色素沈着は治るのでしょうか。



【答え】 タムシ -外用療法は規則的に-

白井皮膚科 院長 白井 志郎(徳島市佐古四番町)

 タムシについて簡単に説明しましょう。タムシはカビの一種によって起きます。もちに生えるカビと同じ仲間で菌類に属します。菌類とはおおざっぱにいうと寄生植物のことで、キノコも同類です。カビはどこにでもいる生物で種類もたくさんあります。

 この中で人の皮膚に寄生するカビを真菌と呼び、この真菌が引き起こす病気を真菌症といいます。ご質問のタムシは白癬菌という真菌が皮膚に寄生した病気です。白癬菌は皮膚の表面の角質を栄養にして増えるので、毛髪や爪(つめ)にも寄生しますが、温かく湿った部位で増えやすい性質があるため、そけい部や足の指の間に多くみられます。

 初期のタムシの特徴は、ドーナツ状に広がっていく赤い輪です。境目の皮膚は堤防のように盛り上がり、ささくれのような皮膚片が付着しています。中心は治まって正常な皮膚のように見えることが多く、大きさは貨幣大から手のひら大以上までさまざまです。発症からの経過が長いと堤防状の隆起がはっきりしなくなったり、色素沈着を起こしたりすることがあります。

 診断は病巣の角質を削り取って顕微鏡で白癬菌の有無を検査します。

 タムシなら抗真菌剤を1日1~2回塗れば多くの場合、数週間で改善します。時にかぶれを起こして赤くなることがありますが、あなたの場合はかぶれではないようです。処方された外用剤は効果がないようですが、きちんと塗りましたか。3日坊主じゃなかったですか。薬を塗る前に消毒したり、アロエを張ったりしていませんか。入浴時、あかすりでごしごし擦っていませんか。これでは外用剤の効果もあまり期待できません。

 塗ってすぐ効く魔法の薬はありません。外用療法の主なポイントは、せっけんで優しく洗い、皮膚の汚れを取る、毎日規則的に塗る、塗り残しのないように、まんべんなく塗るです。

 外用療法が効かないか、あるいはかぶれて症状が悪化する場合、内服療法に切り替えます。副作用として肝・腎機能障害や白血球減少、光線過敏などが起きることがあります。薬局では購入できず、医師の処方せんが必要です。

 タムシによく似た症状に、慢性のかぶれがあります。皮膚が下着で擦れた場合や、圧迫される部分への慢性的な刺激で発症します。かゆみが激しく、引っかいているうちにごわごわした皮膚になったり、色素沈着を起こしたりします。発汗の多い夏場にひどくなります。

 かぶれはステロイド剤の外用や抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤の内服で治療します。治療とともにかぶれの原因物質と接触しないことが大切で、必要に応じて原因確定のためにパッチテストを行うこともあります。

 原因が何であれ、色素沈着は基礎の皮膚病が改善された後も長期間残ります。有効な治療法はなく、日にち薬と考えてください。いずれにせよ再度、皮膚科の受診をお勧めします。

徳島新聞2000年10月22日号より転載

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