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【質問】 夫の睾丸にしこり

 60歳の夫のことで相談します。5~6年前から睾丸(こうがん)にひっついて4~5センチの丸い塊ができています。最初は小さかったのですが、だんだん大きくなっているようです。歩行時にもすれて歩きにくいそうですが、医者に行こうとしません。そのままにしておいてもよいのでしょうか。とても心配です。



【答え】 陰嚢内疾患 -泌尿器科で早期受診を-

渡辺医院 院長 渡辺 国郎(麻植郡鴨島町麻植塚)

 陰嚢(いんのう)は、睾丸(精巣)、副睾丸(精巣の上の部分)、精索などの陰嚢内の臓器を覆う皮膚で、お尋ねの「丸い塊」は、これら陰嚢内の臓器に発生した疾患と考えられます。

 睾丸は左右一対のだ円形の臓器で、成人ではほぼハトの卵ほどの大きさです。弾力性があり、陰嚢内である程度自由に動いて、圧迫されると不快な痛みを感じます。副睾丸は睾丸の周りに付着している細長い器官で、精管につながっています。精索は精管、睾丸の血管(精索動静脈)などが一束になって、鼠径(そけい)管を上って下腹部にいたる索状体です。

 さて、陰嚢内に痛みを伴わないではれてくる病気には「陰嚢水腫(しゅ)」「精索水腫」「精液嚢腫」「睾丸腫瘍」などがあります〈図参照〉。

 陰嚢水腫は睾丸を包んでいる睾丸鞘膜(しょうまく)からリンパ液が過剰に分泌されることにより、鞘膜腔(くう)にリンパ液がたまり、陰嚢がはれた状態です。症状はほとんどなく、ときに大きくなって鈍痛がみられる程度です。触れてみれば水がたまっていることが分かります。ペンライトで陰嚢に光を当てると、よく光を通します。注射針で内容液を抜いてみて、黄色がかった透明色であれば陰嚢水腫と診断できます。

 精索水腫は、睾丸から上にある精索の周りの鞘膜にリンパ液がたまった状態です。触ると弾力性のあるシコリが感じられ、透光性があります。陰嚢水腫も精索水腫も、液体を抜いただけで完治することはないので、日常生活に支障をきたすときには手術が必要です。

 精液嚢腫は、副睾丸にある精子を運ぶ管のどこかに閉塞(へいそく)が起こり、睾丸や副睾丸の周囲に精液の入った袋状のものができる疾患です。

 痛みなどの症状はなく、触れてみて偶然に発見されることが多いようです。大きくなると陰嚢がはれて、陰嚢水腫や精索水腫との区別が難しいこともあります。陰嚢にペンライトを当てると透光性があり、針を刺すと乳白色の液体が取れ、この液の検査で精子が発見されれば診断がつきます。精液嚢腫は小さくて症状がなければ治療の必要はありませんが、大きいものは手術で取り除きます。

 一方、睾丸腫瘍は睾丸に発生する悪性腫瘍(がん)です。まれな腫瘍ではありますが、青壮年の男性によく発生するという特徴があります。腫瘍が発生すると、睾丸が徐々に大きくなりますが、痛みや熱はありません。陰嚢水腫、精液嚢腫などと異なるものであれば、睾丸腫瘍の疑いが強くなります。

 もちろん、この病気は早期発見、早期治療以外に治す方法がありません。

 さてご質問を見る限り、ご主人の病気は陰嚢水腫や精液嚢腫などの良性のシコリであると思われますが、念のため泌尿器科を受診し、悪性腫瘍でないことを確かめておかれるとよいでしょう。

徳島新聞2000年8月6日号より転載

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