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県民の皆さまへ

【質問】 食事療法や運動の仕方は

 58歳の女性です。5月の県総合健診で高脂血症を指摘され、食事療法と運動療法を行ったうえで2~3カ月後に再検査を受けるように言われました。身長154センチ、体重56キロ、総コレステロール H235、LDL-C151と書いてあります。高脂血症とはどのような病気なのですか。また、食事療法や運動の仕方を教えてください。20年ほど前から時々胸が締め付けられるような痛みを感じることがあります。心電図は異常ないのですが、高脂血症と関係があるのでしょうか。



【答え】 高脂血症 -目標立て毎日継続を-

徳島県立海部病院 名誉院長 山野 利尚

 結論から申しますと、あなたの場合は、軽い高脂血症(おそらく2a型)で、コレステロール値のレベルからみて、通常は無症状です。治療は、すでに指示を受けられている通り食事、運動療法を行う必要があります。今のところ、薬は不要です。

 20年来続く胸の締め付けられる症状は、医師に相談された方がよいと思います。高脂血症との関連は不明です。胸部に不快感や疼痛(とうつう)があるときには、狭心症が疑われ、通常の心電図では異常なしと判定されることが多いようです。このため負荷心電図、24時間心電図、心臓超音波検査などが必要です。さらに詳しい検査もあります。ただし胸部症状は、肺の病気や神経痛、神経症が原因になって起こることもあります。

 さて、高脂血症は、血しょう(血液中の血球を除く液体成分)の総コレステロール(TC)と中性脂肪(トリグリセライド=TG)のどちらかの値が高いか、または両者がともに高値である状態をいいます。

 TCやTGは、脂肪ですから水分に溶けません。このため血液中ではタンパクと結合したリポタンパクとして存在します。高脂血症はこのリポタンパクの組成によって6つの型に分類されています。それぞれの型で症状、合併症、治療法が多少異なります。

 6つの型のうち比較的多いのは、低比重リポタンパク(LDL)が増加する「2a型」(TCが高値)と、「2b型」(TCとTGが高値)の2つの高脂血症です。

 高脂血症自体は無症状ですが、その多くは、目の周囲や皮膚などに黄班が見られる「黄色腫(しゅ)」や「動脈硬化症」、「胆(たん)石」、「すい炎(?a型ではまれ)」などの病気にかかることがあります。

 動脈硬化症は、無症状のまま経過します。しかし、ある日突然、冠動脈疾患(心筋こうそく、狭心症)や脳卒中(脳こうそく、脳出血)、閉そく性動脈硬化症(手足の冷えや切断の原因)などの病気を引き起こし、生命を脅かしたり、日常生活に支障をきたしたりします。

 高脂血症は、遺伝に加えて過食、運動不足、ストレス、喫煙、飲酒などの環境因子が原因となります。また、二次性高脂血症といって、糖尿病、甲状腺(せん)機能低下症、腎臓病のネフローゼ症候群などの病気を持っていると、併発しやすくなります。

 治療は、前記の冠動脈疾患などを予防するために行われ、食事、運動、薬物療法があります。

高脂血症の治療目標

●標準体重=身長(m)×身長(m)×22(kg)
あなたの場合1・54×1・54×22=52・1(kg)
※体重は現状でよい

●1日の食事量
=標準体重(kg)×必要エネルギー
必要エネルギーは、
軽作業25、中等度30、重労働35(kcal/kg)
です。
あなたの仕事の程度を中等度作業として計算
すると
52・1(kg)×30(kcal/kg)=1563
※1500―1600kcalの範囲内を目標に

●検査値
(加齢の危険因子を加味。
   危険因子の有無は医師に相談ください)
総コレステロール 200mg/dl未満、
LDL―C      120mg/dl未満、
HDL―C       40mg/dl以上、
中性脂肪      150mg/dl未満

まず治療目標を立てましょう〈表参照〉。

 食事療法の基本は、バランスのよい食事を適量に取ることです。
 <1>コレステロールが多い肉や卵黄などは取りすぎに注意。豆腐や納豆はよい<2>動物性脂肪は控えめに、植物性脂肪を多くする<3>食物繊維(野菜、キノコ、海藻類など)を多く取る<4>糖分(お米、パンなど)の取りすぎに注意する<5>アルコールはほどほどに(ビールで500ミリリットル以下)-などです。食事は、よくかんで、間食は避けましょう。

 運動療法は、コレステロールを下げる効果は弱いものの、善玉コレステロールのHDL-Cを増加させ、肥満予防にもなります。体を動かすことは、生活の基本ですから、例えば、毎日体操を朝夕各5分間と、8000-10000歩(2.5-3キロ)の歩行などはどうでしょうか。専業主婦は、約3500歩しか歩かないといわれています。

 高脂血症は、糖尿病とともに生活習慣病の代表です。日ごろから食事、運動などに気をつけ、無理をせずに毎日継続することが大切です。

徳島新聞2000年7月23日号より転載


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