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【質問】 斜めに歩いていると指摘され

 51歳の女性です。3年前、他人から斜めに歩いている、と指摘され受診しました。CT撮影の結果、小脳が縮んでいて「脊髄(せきずい)小脳変性症」と診断されました。その後1年ほどは自覚症状もほとんどなかったのですが、今では歩くのにも、文字を書くのにも、言葉をしゃべるのにも不自由を感じています。難病だそうで、手の施しようがなく、悪くなっていくのをただ待っているだけといった状態です。何かよい治療法、リハビリ法があれば教えてください。



【答え】 脊髄小脳変性症 -訓練で運動機能回復へ-

小松島赤十字病院 健診部長兼内科副部長 増田 健二郎

 脊髄小脳変性症は、手足などに麻痺(まひ)やしびれがないのに、「運動失調」といってうまく体を動かすことができなくなり、手足などの動作や起立・歩行の障害が起きる病気の総称です。脊髄型、脊髄小脳型、小脳型に大きく分けられますが、それぞれの型にたくさんの疾患があり、障害の部位によって症状は異なります。

 運動失調症状だけが現れる場合もありますが、これに加え、手足が突っ張った感じで細かい動きができない錐(すい)体路症状や、体が硬くなり動作がゆっくりになるパーキンソン病のような症状、あるいは起立性低血圧や便秘といった自律神経症状を示すこともあります。

 原因は今でも多くが不明のままです。ただ、最近の研究から、運動失調が現れるいくつかの疾患では、神経細胞にポリグルタミンが蓄積していることが分かってきました。今後の研究で、ポリグルタミンを蓄積させないようにする根本的な治療法が、開発されるでしょう。

 現時点では、甲状腺刺激ホルモン放出因子(TRH)による治療が、徳島大学医学部をはじめ県内の各病院で行われており、ある程度の効果はみられるようです。この治療法は、毎日、注射で投薬しなければならないので入院が必要となります。経口薬(飲み薬)も開発中で、そのうち通院や自宅での治療も可能になると思われます。

 TRHとは別に、他の病気を治療するための薬が、脊髄小脳変性症に効果があったとの報告もありますから、神経内科の専門医に相談されるとよいでしょう。

 当然のことですが、リハビリは大変重要です。健康な人と同様に、訓練すれば運動機能はある程度よくなります。また、体のバランスが取りにくい場合は、そのような症状にあった装具もあります。変性に陥った神経があっても、残っている神経が失われた機能を肩代わりすることも考えられます。

 運動失調の上に筋力低下が加わったり、関節の動きが悪くなると日常生活動作が著しく障害されますので、日ごろから筋力や関節機能の維持、増進させておくことが大切です。

 またリハビリを行うことによって、理学療法士や病院のスタッフと話したり、同じ症状の患者さんと知り合いになることは、自分の病気の理解を増すうえ、互いに励まし合う点で精神的にもよいと思います。

 脊髄小脳変性症は、パーキンソン病などとともに厚生省の特定疾患に指定されており、治療法が盛んに研究されています。病院も整備されつつあり、各地域で拠点病院や協力病院を決めてネットワークが作られつつあると聞いています。保健所などで相談を受け付けてくれます。一人で悩まずに医療機関や保健所、福祉の窓口を訪ねてみてください。

徳島新聞2000年5月7日号より転載

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