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【質問】 16歳の娘が耳鳴り

 16歳の娘の耳鳴りが治まりません。昨年9月ごろから始まり、だんだんとひどくなっています。音も高い音になったり、音が何重にもなったりします。朝、目が覚めると同時に始まり、夜寝るときもイヤホンでラジオを聞きながらでないと、うるさくて眠れないほどです。睡眠不足で本人の精神状態も限界です。耳鼻科を受診しましたが、聴力に問題はなく、心配ないと言われ、頭部のMRI(核磁気共鳴診断装置)も、異常なしとのことでした。整体やはり治療などが良いと聞きますが本当でしょうか。だんだんひどくなるのは何か原因があるのでしょうか。娘はよく肩が凝り、シップを欠かさず張っています。



【答え】 無難聴性耳鳴り -まず肩凝りの緩和から-

手束病院 医師 日根 其二(名西郡石井町石井)

 耳鳴りとは、外から音の刺激がないのに、耳や頭の内部に音を感じることで、何らかの聴覚障害に基づく症状の一つです。

 耳鳴りは、耳の中の音を感じる器官や、感じた音を脳に伝える中枢神経系に、何らかの刺激が加わって起こるなどと考えられています。一部の耳鳴りを除いて、患者にしか分からないため、診断や治療を困難にしています。

 音を感じる器官そのものに疾患がある場合は、難聴と耳鳴りの両方が起こるケースが比較的多くみられます。このため、まず難聴の診断を行ってから、耳鳴りとの因果関係などをはっきりさせていくというアプローチがなされています。

 あなたの娘さんの場合は、標準的な聴力に問題はないとのことですから、いわゆる難聴を伴わない無難聴性耳鳴りとみなされます。また、頭部のMRIも異常ありませんから、生命に影響を及ぼしかねない聴神経腫瘍(しゅよう)による耳鳴りも否定されます。以上から娘さんの耳鳴りは、耳の器官そのものに原因があるとは考えにくいと思われます。

 そうなれば、次に器官の周辺や全身的な原因を探さなければなりません。質問によると、娘さんには頑固な肩凝りが続いていることと、精神的な不眠状態にあることが挙げられています。後者は耳鳴りの結果、そうした状態になったものと思われますので、ここでは肩凝りに注目してみました。

 肩凝りがひどかったり、長く続いたりすると、頚(けい)部の痛みや圧迫痛のほか、神経症状としてののぼせ感、ふらつき、耳鳴りなどを伴うことがあります。私自身、肩凝りなどで、頚部の痛みを訴える患者さんに、痛みの緩和剤の注射を続けることで、耳鳴りが改善した経験を持っています。また、頚椎(けいつい)ねんざ、いわゆるムチ打ち症でも、耳鳴りを訴えることがあります。

 このように耳鳴りは、耳の器官の病気に限らず、しばしば起こるものです。その理由は、脊柱(せきちゅう)を支えている首の筋肉と脳幹、そして内耳が、機能的に密接に連係しているからです。

 娘さんの場合も、肩凝りの症状について整形外科でみてもらい、機能訓練などで凝りを和らげることから始められることをお勧めします。治療によって肩凝りが軽くなるだけでなく、耳鳴りとの因果関係が分かる場合もあるでしょう。

 最後に先ほども述べたように、耳鳴りは、耳の病気に限らず、ほかの病気でもしばしば現れる幅広い症状です。原因と思われる症状を一つひとつ取り除く努力を惜しまないことです。そのうちに自分に適した治療法が見つかれば、完治は困難でも、ある程度の効果は期待できると思います。

徳島新聞2000年2月27日号より転載

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