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【質問】 食事すると下腹が張る

 73歳の女性です。6年前に直腸がんの手術を受け、ストーマ(人工肛門)をつけています。2~3年前からストーマをつけているおなかが小山のように膨らんでいます。医師に聞くと重い物を持たないように、ということです。今は腹帯をしています。食事をすると下腹が張り、苦しくなりますが、横になると良くなります。便秘薬を飲んでいるので、便は毎日出ています。腸閉そくの心配はないでしょうか。このまま生命に影響はないでしょうか。



【答え】 人工肛門のトラブル -手術的に修復の必要も-

豊崎医院 院長 豊崎 纒(徳島市北田宮2丁目)

 直腸がんの手術では、腫瘍(しゅよう)の存在する部位によっては、残念ながら人工肛門をつけなければならないことがあります。腫瘍を含め、直腸、肛門を切除してしまい、そして結腸の端を腹筋の間を通して腹壁に出す手術をします。

 このような手術を受けた方は、病気の再発や合併症などの不安、ストーマを持つことやそのケアに関してのさまざまな悩みを抱えることが少なくありません。


 さて、質問の内容からは、人工肛門の合併症の一つである「ストーマ周囲のヘルニア」(図1)が考えられます。ストーマのところで腹壁と腸管の間に生じるすき間を通して腸管が皮下に脱出してくる型のヘルニアで、小さいものは、よく知らずに見逃されています。せきをしたときに多少盛り上がる程度のものから、はっきりおわんを伏せたように膨らんで盛り上がるものまで多様にあります。

 6年前に手術を受けて、順調に経過していたにもかかわらず、2~3年前から異常が出てきたとのことですが、恐らく、年をとることによって腹筋がもろくなって症状が現れたと思われます。

 腹帯をするのも一つの方法ですが、一種の腹壁ヘルニアですので、日常生活に非常に支障を来たすような場合には、手術的に修復しなければなりません。

 さらに、腸閉そくの心配ですが、人工肛門を作った腸管と、外側の体壁腹膜との間にすき間ができている場合には、小腸がこの間に入り込んで「内ヘルニア嵌頓(かんとん)」(図2)を起こすと腸閉そくになることがあります。しかし、質問の方の場合は、横になると良くなるということで、腹痛もなく、排便、排ガスが順調にあれば、腸閉そくの心配も生命への影響もないと思います。

 人工肛門を付けた患者さん(オストメイト)の生活の質「QOL」を高めるための相談会開催などの活動をしている日本オストミー協会という団体があり、徳島にもその支部があります。

また、私の知る範囲では、県内では徳島大学、県立中央病院、阿南共栄病院にストーマ外来があります。さまざまな人工肛門のケア、トラブル時の対処などについて相談するとよいでしょう。

徳島新聞1999年8月29日号より転載

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