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【質問】 3年前からひどいぜんそくに

 定年退職を目前にした59歳の会社員です。3年前からぜんそくになり、困っています。生理が52歳で終わり、その後2年間は元気いっぱいで「私には更年期がない」と喜んでいました。ところが、ある日、風邪をひいたと思って病院で診察を受けたところ、喘息と言われました。2週間ほど通院し、薬で治りましたが、最近ますますひどくなっています。夜中に息が止まりそうになり、死ぬかと思うくらい苦しいときがあります。抗生剤とか、気管支拡張剤を飲んでいますが、副作用が心配です。しかし、薬をやめれば、喘息が悪化しないかと思い、医師の言う通り薬を続けています。喘息は完治しないのでしょうか。また、どんな治療法があるのでしょうか。母も心臓ぜんそくで、70歳で亡くなっています。



【答え】 気管支ぜんそく -何が原因か検査必要-

島田内科院長 島田 久夫(徳島市川内町平石)

 相談の文面から察しますと、気管支ぜんそくと考えられます。

 気管支ぜんそくの発症年齢はさまざまで、子どもから高齢者まで、いつ発症してもおかしくありません。発症の誘因として最も多いのが上気道感染です。あなたのようにある日突然始まることもあります。更年期も無事終わろうとしているのに悔しいですね。

 気管支ぜんそくは、その多くがアレルギー性で、原因物質(アレルゲン)は今の住環境にあります。代表的なアレルゲンは室内のちり(ハウスダスト)の中のダニです。ほかにカビ類、ペットの上皮、花粉などがあり、詳しい検査が必要です。

 検査法は、皮膚の反応を見る「皮膚テスト」や「スクラッチテスト」、血液検査による「特異的抗体検査」などがあり、組み合わせて総合的に判定します。最も困るのが、アレルゲンの見つからないときです。積極的除去の目標がないからです。そのときは、薬など化学物質に原因はないかと考えます。

 56歳という中高年発症型ですので、鎮痛剤誘発性ぜんそく(アスピリンぜんそく)の可能性もあります。最初に風邪で医師にかかる前、市販薬を服用しなかったでしょうか。

 服用後、症状が悪くなったなら、アスピリン喘息の可能性があります。よく効く鎮痛解熱剤ほど危険です。その診断をするには、誘発試験が一番ですが一般には行っていません。またアスピリンぜんそくの場合、ちくのうや鼻ポリープが高い割合で合併していますので、耳鼻科医の診察を受けることも必要です。

 治療としては、気管支拡張剤と吸入ステロイドが主となり、抗生剤や去痰(きょたん)剤は必要に応じて追加します。最初から経口ステロイドを併用することもあります。中途半端な治療にならないようにしてください。うまくいかない理由の多くは薬の量的不足です。

 とにかく、できるだけ早く発作状態から正常な生活に戻す必要があります。改善しても約2週間は再発しやすいので、安定状態が続けられるようピークフロー(最大呼気流量)を測定しながらの自己管理が勧められています。その後は主治医の先生とよく話し合い、抗アレルギー薬の必要性や、服薬、吸入のポイント、受診のタイミングの指導を受けておきましょう。

 ぜんそくは完治しないのかと質問されると、「ぜんそくの発作や苦しさは抑えることができます。しかし成人の場合、ぜんそくのルートは完成されやすいので、レベルは軽くなるが、完治するのは難しいでよう」と答えています。「戦って消耗するより上手に付き合う方が得策で、やがて向こうが根負けして逃げていくかもしれません」と。

 ぜんそくは、アレルギー素因として遺伝するのか、まだ研究段階にあります。心臓ぜんそくは心機能不全の一症状ですので、お母さんの病名も気管支ぜんそくであったのかもしれません。

徳島新聞1999年2月28日号より転載

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