徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

 【質問】卵半分大になり痛む

 70代の女性です。6年前に左足の甲に小さなガングリオンができました。昨年末までは手で押し込むなどしていましたが、以降、どんどん大きくなっています。2カ月前にピンポン玉の半分ぐらいだったものが、今は卵半分ぐらいの大きさです。靴で擦れて痛みもあり、手術が必要ではないかと思っています。専門医のご意見をお聞かせください。

 

斎藤整形外科 斎藤慎一郎 先生

 【答え】再発すれば根元から除去

 【答え】足の甲のガングリオンとのことですが、針で刺して内容液などを調べてみたでしょうか。足部が腫(しゅ)瘤(りゅう)様に腫れる原因として、足関節部の滑液包炎、脂肪や神経からの軟部腫瘍などがあります。ガングリオンは針で刺すと、ゼリー状の内容液が溜まっているのが分かります。滑液包炎では、一般には黄色い水様の内容液が抜けます。

 ガングリオンは触った感じが硬い塊のようで、滑液包炎はぶよぶよと軟らかいことが多く、滑液包炎の方が大きくなりやすいように思います。どちらも良性のものであり、痛みや違和感などの症状が無ければそのままでも良いといわれていますが、痛みがあるのであれば、一度、整形外科などで受診して、針で内容液を抜いて確認した方が良いでしょう。

 ガングリオンは注射で内容液を抜くことにより、なくなって治癒(ちゆ)することもありますが、再発することもよくあります。内容液を抜いても再び大きくなり、痛みがあったり、靴などに擦れて傷になったりするようであれば、手術も選択肢の一つとなります。

 しかし、ガングリオンは部位にかかわらず手術後の再発の可能性が高く、10~30%の割合で再発したとの報告もあります。ガングリオンは手の周囲に多く、足には比較的少ないのですが、再発する可能性は手の周囲などと比べても高く、再手術が必要になることもしばしばあります。

 私が手術を行った方の中にも、いくつかの整形外科で数回の手術を行ったものの、母(ぼ)趾(し)の根元に再発を繰り返した患者さんがおられました。その方は、足の裏の腱(けん)鞘(しょう)に原因となるガングリオンがあり、それが歩くことによって圧迫され、趾の背側(甲側)に出てきていました。このため、足の裏を切開してガングリオンを取ることによって、指のガングリオンも治癒しました。

 このように、ガングリオンは腱鞘や、関節から出てくることが多く、根元から取ってしまわなければ再発する可能性が高いので、手術をするのであれば術前に十分な検査が必要です。

 検査は、超音波検査やMRI(磁気共鳴画像装置)検査を行い、ガングリオンの出ている場所、数(たくさんのブドウの房のようにできていることもあります)を確認して、十分に根元まで取ることが大事になります。

 しかし、根元の腱鞘や関節包の位置、たくさんのガングリオンが存在している場合などは、どうしても取り切れずに再発することもあります。また、ガングリオンが神経の中に潜り込んでいるような場合には、無理に全部取ろうとすると手術前より痛みが増強することもあり、注意が必要です。

 このように、ガングリオンはありふれた病気ではあるのですが、治療は難しい場合も多く、手術を行うには主治医の先生によく相談して、十分な準備のもとに行った方が良いと思います。

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.