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【質問】釣りで右肘に痛み

 50代の男性です。仕事で、釣り竿を上下に激しくしゃくる「ジギング」という釣りを長年続けています。最近、右肘に痛みを感じるようになり、整形外科で「テニス肘」と診断されました。過度な負担を掛けていたことに加え、加齢による筋力低下も影響しているようです。有効な治療法を教えてください。

吉田整形外科 吉田成仁 先生

【答え】安静にすれば大半は回復

 テニス肘は、物を持ち上げたり、タオルを絞ったりする動作などで肘の外側(親指側)に痛みを来す病気で、上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)とも呼ばれています。

 テニスなどのラケットを使うスポーツで多くみられるため、このような名前が付いていますが、患者さんの半数以上は40~50代の女性で、頻回にパソコンやスマートフォンのキーボードを打ったり、レジ打ちの仕事をしたりする人にみられます。男性では質問者のように、手首を強く使う仕事を長年続けてきた中年以降の人に多くみられます。スポーツではテニスのバックハンドストロークのように、手首を背屈する(甲側に曲げる)動作で発症し、これも中年以降に多くみられます。

 手首や指を背屈させる筋肉は、肘の外側の骨の突出部に付着して始まり、手首や指の骨に付着して終わる形となっています。この間で筋肉が収縮し、手首や指を動かします<図参照>。

 手首や指を背屈すると、肘の外側の、筋肉が骨に付着する部分に引っ張る力が掛かります。中年以降になって、この部が弱くなると、小さな断裂や剥離が起こり、痛みを来すようになります。1回の強い衝撃で起こることもあれば、長期間にわたり繰り返された刺激によって起こることもあります。

 症状は、手首や指の運動時、肘の外側部に痛みを感じるのが特徴で、肘の外側に圧痛(抑えると痛む)があります。通常、肘の動きだけでは痛みは出ません。また、手首を強く握り込んだり、手首を背屈させて手の甲側に抵抗を加えたりすると、肘周辺に痛みが出ます。

 診断は比較的容易ですが、骨や関節の変形によるものや肘周辺の神経の圧迫でよく似た症状を来す場合もありますので、診断の確定には医師の診察を受けてください。

 治療は原則として、安静(できるだけ痛みを起こさないようにする)です。70~80%は1年以内に自然に軽快するといわれています。手首を使うときは甲側に曲げず、手のひら側に曲げるようにすると痛みが出ません。

 痛みの強いときには消炎鎮痛剤の内服や湿布をします。痛みや炎症を取るステロイドホルモンの注射も有効ですが頻回にはしません。肘を伸ばして手首を手のひら側や甲側に曲げるストレッチ体操や、痛みの出ない程度の筋肉トレーニングが有効です。

 温熱療法やレーザー照射、マッサージも行われますが、学術的には、何もしない場合と比較したデータが少ないため有効性は証明されていません。

 肘の少し手首寄りにパットを当てて筋肉を締め付け、筋肉の動きを付着部に伝わりにくくするテニス肘用サポーターや、手首を固定するサポーターも有効です。どうしても治らない場合は手術を行いますが、一般的ではありません。どの治療法が最も有効かは個人により異なりますので、主治医と相談の上、自分に合った組み合わせを探してください。

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