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 【質問】50代の女性です。最近、味が分からなくなりました。食べ物の味を薄く感じるため、食事の支度をしても「味付けが濃くなった」と家族から指摘されます。味覚障害だと思って漢方薬を飲んでいますが、症状は良くなりません。何が原因なのでしょうか。対処法を教えてください。

 清水耳鼻咽喉科医院 高岡司 先生

 【回答】原因診断し早期治療

 ご自身が味覚の低下を自覚している上、ご家族からも味覚障害を指摘されているとのこと、大変お困りのことと思います。

 味覚障害は感覚の障害であり、症状の程度を数字で表すことが一般的でないため、つかみどころのない症状として診断や治療が遅れることも多く、あるいは原因を調べずに漫然と治療されることもあります。

 まず味覚について一般的な説明をします。人間の五感として視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚があり、新生児でも反射的に反応する原始的な感覚です。

 さらに細菌や単細胞生物にすら、栄養となるブドウ糖を移動して取り入れたり、毒物から離れるなどの走化性といわれる反応が証明されています。この能力は味覚の原型といわれ、人間だけの特殊な能力ではありません。それだけに、味覚の障害は基本的な生存能力の障害でもあり、深刻な問題となり得ます。

 また、味覚と嗅覚には関連があり、嗅覚障害を味覚障害と感じたり、またその逆だったりと、どちらかが障害されただけで別の障害と混同されることも珍しくはありません。

 そのため、味覚障害が純粋な味覚の障害(低下)なのか、嗅覚障害の混同なのか、あるいは別の病気の症状ではないかなどを、できるだけ正確に診断する必要があります。

 実際の診察の流れとしては、問診で症状はいつからか、きっかけはないかなどいろいろとお聞きし、耳・鼻・のどの診察を行って炎症や腫瘍がないかなどを確認します。

 次に、味覚障害の程度を電気味覚検査などで測定した後、舌に存在する味を感じる味蕾(みらい)という細胞を拡大して観察します。

 味覚より嗅覚障害が主な原因であれば、アリナミンの注射で嗅覚障害の程度を確認することもあります。

 また、種々の原因による亜鉛低下で味覚障害が発症するため、血液中の亜鉛濃度も治療前に測定しておきます。

 原因によっては、たとえば薬剤性であれば薬を変更し、亜鉛の低下が関与していれば亜鉛を補充し、副鼻腔炎(ふくびくうえん)(畜膿(ちくのう))ならその治療をするだけで味覚や嗅覚が改善することもあります。

 ここで大事なことは治療開始時期で、早ければ早いほど治療効果が高いことが証明されています。できれば障害が出てから3カ月以内には治療を始めるべきだといわれています。

 もちろん、診断や治療が遅れたからといって放置するのではなく、QOL(生活の質)向上や他の原因疾患の診断のために、一度は精査を検討してみることが必要と思われます。

 幸い、人間が感じる味覚には、先に説明した新生児にもみられる反射的な反応以外に、学習によって獲得する味覚もあります。味覚障害が栄養障害や生存の問題に直結するとは限りません。

 以上のことを踏まえ、まずは味覚障害の原因や程度を診断の上、早期に治療されることをお勧めします。

 味覚・嗅覚障害について扱う医療機関として、耳鼻咽喉科があります。一度、近くの耳鼻咽喉科に連絡して確認の上、受診してみてください。

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