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 【質問】「キーン」という音が聞こえる

 60代前半の女性です。耳鳴りがして聞こえにくくなったので受診したところ、飲み薬を処方されました。鳴り始めたときの「ブーン」という音は治まり、聞こえるようになったのですが、夜寝ようとすると「キーン」という音が聞こえます。医師は「人間、常に耳鳴りはしている。意識するから聞こえるのであって、心配いらない」と言うのですが、放っておいていいのでしょうか。

 

上田耳鼻咽喉科 上田健二 先生

 【回答】食事の生活習慣改善して
 
 一般的な耳鳴りについて書きたいと思います。

 耳鳴りは耳鼻咽喉科疾患のうち、治りにくい疾患の一つです。耳鳴りの発症時点は分かる場合が多いです。程度の具合はさまざまですが、その発症時での受診が大切と思います。
 
 問題はその治療です。残念ながら数十年前と現在で、治療での大きな変化はないように思います。
 
 具体的には<1>循環改善剤、代謝改善剤、一部のビタミン剤、一部の利尿剤、抗不安薬、抗うつ剤、漢方薬<2>メニエール病、突発性難聴には、ステロイド剤の内服・経静脈的投与・鼓室内注入<3>麻酔薬であるキシロカイン静注<4>新しい治療法としては、ノイズで耳鳴りを消したかのように錯覚させるTRT療法(耳鳴り順応療法)<5>心理療法-です。
 
 耳鳴りの原因・治療・予防で、必ず俎上(そじょう)に載るのが生活習慣病です。生活習慣病の代表は<1>肥満症<2>糖尿病<3>高血圧<4>脂質異常症です。これに<5>肝機能異常<6>高尿酸血症も加え、毎年「特定健診」として実施され早期発見を図っているわけです。
 
 国は早期発見・早期治療を軌道に乗せ、5大疾患である「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」「糖尿病」「精神疾患」の制圧に躍起となっています。運動・食事の情報を発信し、生活習慣病の早期発見・早期治療を推進していますが、十分な成果が上がっているとは思えません。
 
 そこで私が注目しているのが「糖質制限」です。日本耳鼻咽喉科学会では治療の一つとは認められていませんが、生活習慣病が難聴・耳鳴りの原因となっていることは認められています。
 
 厚生労働省調査では、日本人は1日にエネルギー比率約60%の糖質を摂取しています。私たちの体はこれだけの糖質摂取に耐えられる構造にはなっていないのです。試算すると、私たちの血液中糖質総量は約5グラム、小さじ1杯です。糖質摂取で必ず血糖は上昇するのです。そして追加インスリンが必要になってくるのです。たんぱく質・脂肪摂取では血糖は上がりません。
 
 糖質制限を続けると、特定健診項目の<1>~<6>が見事に改善します。全ての方が全ての項目で正常範囲に収まるとは断定できませんが、その結果には驚かれるはずです。私が体験者です。2年間継続中です。結果がついてくるのでやりがいがあります。
 
 今回のご質問は「耳鳴り」という症状・疾患ですが、その原因は生活習慣と思います。そして、その生活習慣の最も大きな原因は「過剰な糖質摂取」です。
 
 なお、糖質制限の実行に際しては、糖質制限に理解のある医師とご相談ください。薬剤によっては低血糖を来す場合があります。また、たんぱく質・脂肪・緑色野菜をバランスよく摂取し、水分補給も忘れないようにお願いします。食事以外の生活習慣は、常識の範囲で行ってください。

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