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ひうら小児科 日浦恭一

 ヘモグロビンの役割は酸素を運搬して組織に酸素を供給することです。ヘモグロビンの不足した状態を貧血と言います。貧血になると組織が酸素不足に陥り様々な症状が現れますが、急激に起こった貧血以外では明らかな症状が現れないこともあります。今月は子どもの貧血について考えてみました。

 貧血にはその原因によって次の4つが考えられます。(1)血液を作る骨髄の異常による貧血、(2)血液を作る材料不足による貧血、(3)赤血球寿命が短く赤血球が壊れやすくなって起こる貧血、(4)赤血球が失われて起こる貧血です。

 (1)には再生不良性貧血や白血病など、(2)には鉄や葉酸、ビタミンB12の不足から来る貧血、(3)には溶血性貧血、(4)には外傷や消化管出血などによる貧血が含まれます。
 この中で子どもにもっとも多いものは鉄欠乏性貧血です。

 ヘモグロビンを作るにはその材料である鉄が必要です。血液量はからだの大きさに比例しますから成長が著しいときにはヘモグロビンの材料となる鉄の必要量も増加します。とくにからだの成長が著しい乳幼児期と思春期には鉄の必要量が増加します。

 成人ではからだの中に3~4gの鉄があります。その65%がヘモグロビン鉄として存在し、残りの30%はフェリチンやヘモジデリンなど貯蔵鉄として存在します。その他の鉄は、ミオグロビンとして筋肉内に3.5%、チトクロムやカタラーゼなどの酵素として0.5%、さらに血清鉄として0.1%が存在します。

 からだの中にある鉄は毎日1mg程度が大便や尿、汗などに排出されています。この排出量と同じ程度の鉄を食事から補給する必要があります。また乳幼児期や思春期にはからだが急速に大きくなりますからその成長に見合った量の鉄を補給する必要があります。

 排出される鉄や成長に必要な鉄を食事から補給できなければ鉄欠乏性貧血になります。

徳島新聞2009年5月13日掲載

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