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 日本脳炎ワクチンは2005年5月に厚生労働省から積極的な勧奨を中止する通達が出されました。この通達以後、日本脳炎ワクチン接種対象者のほとんどは接種を見合わせている状態です。

 それまで日本脳炎ワクチンは比較的安全なワクチンとされていました。ただしこのワクチンはマウス脳に日本脳炎ウイルスを感染させて作るものなので、ごくわずかのマウスの脳成分が含まれ、そのために起こる副作用がまったくないとは言えないとされます。

 日本脳炎ワクチンの副作用で問題にされたのは急性散在性脳脊髄(せきずい)炎(ADEM)と言われる疾患です。ADEMは感染症にともなって発生することが多い、良性の神経疾患です。

 しかし日本脳炎ワクチンによるADEMが1991年以降13例発生し、内4例が重症のADEMと認定されています。ワクチン接種の100万人に1人以下の発生頻度です。

 またその前にマウス脳を使わない組織培養による新しい日本脳炎ワクチンが承認申請中であり、新しいワクチンに変更できるはずだったのです。しかし新ワクチンは局所の副反応が問題になり承認が遅れています。そのため新ワクチンに切り替えることができなかったのです。

 日本脳炎はワクチンの普及や蚊に刺される機会の減少、豚が周辺に少なくなったことなどで日本での発生は減少しています。

 しかし現在のまま日本脳炎ワクチンを接種しない世代が増加すると、毎年100万人ずつ日本脳炎ウイルスに対する免疫を持たない子どもたちが増加していきます。したがってこのままワクチンが行われなかった場合、西日本を中心とした日本脳炎ウイルス汚染地区の子どもたちの中から脳炎が発生する危険性が毎年増加してきます。

 現在、日本脳炎ワクチンは積極的な勧奨を差し控えられている状態ですが、定期接種から除かれたわけではありません。ワクチンの有用性と副作用とについて十分な説明が行われて、納得が得られる場合にはワクチンを受けることが可能なのです。とくに接種対象年齢を過ぎる人などは十分考える必要があります。

2007年5月22日掲載

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