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 ポリオワクチンは大変すぐれたワクチンで、現在日本では野生のポリオを見ることはありません。しかし生ワクチンであるために起こる問題もあります。今回はそれについて考えてみました。

 ポリオワクチン投与後にワクチン株のウイルスが腸管で増殖する途中、野生株に戻り神経毒性を回復することがあります。この野生株復帰ウイルスによってワクチンを投与された子どもや周囲の免疫を持たない人にポリオ麻痺が発病することがあります。これをワクチン関連麻痺性ポリオ脊髄炎と言います。

この副反応の頻度はワクチンを受けた人について440万回の接種に1回、接触した周囲の人が発病するのは580万回に1回とされます。また免疫不全状態の人がこのポリオを発病する頻度はそれよりも高くなるとともに、毒力を回復したウイルスの排せつも長くなると言われます。

 現在、経口生ワクチンを使用している国は日本、英国、インド、インドネシア、ブラジルなどと多くの開発途上国です。これに対して不活化ワクチンを使用しているのはアメリカ、カナダ、オランダ、ドイツなどです。また不活化ワクチンと生ワクチンを併用している国にはフランス、イタリア、オーストリアなどがあります。

 生ワクチンの免疫は血液中の中和抗体の上昇に加えて、腸管の局所免疫を誘導して、その効果がすぐれています。それに対して不活化ワクチンでは腸管局所免疫は得られませんが、血液中の抗体の上昇は生ワクチンよりも高く、血中抗体陽性率も3回投与で99~100%得られることが明らかになっています。

 ポリオの流行地域で使用するワクチンは生ワクチンが効果的です。ワクチンそのものが安価で、経口投与はとても簡便です。しかしポリオ患者が制圧された国で生ワクチンを使用し続けることはワクチン関連麻痺性ポリオ脊髄炎というような副作用が大きな問題となります。

 世界中にはまだポリオが制圧されていない国や地域があります。世界中のポリオが根絶されるまでは日本でもポリオワクチンを投与し続ける必要があります。そのためにはより安全なワクチンの投与法確立が望まれるのです。

2006年8月22日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.