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 小児科外来の中で嘔吐を訴える患者さんは少なくありません。救急外来を受診する小児の中で嘔吐を主訴とするものが20~30%あると言われます。嘔吐は消化器症状のひとつですがその原因となる病気は消化器疾患ばかりではありません。子どもは簡単に嘔吐しますが、軽い嘔吐の中にも重篤な疾患が隠れていることがあり注意が必要です。今月は子どもに多い嘔吐について考えてみました。

 嘔吐は口から胃内容物が吐き出された状態で、嘔吐をする時に冷汗、顔色不良、動悸、めまいや頭痛などを伴うことがあります。嘔吐に下痢や発熱を伴う感染性胃腸炎の時には脱水症を起こすことがありますので全身状態を把握することが大切です。嘔吐が起こるのは、嘔吐中枢が刺激されるためです。嘔吐中枢は脳幹部、延髄の外側網様体にあり、心臓・肺・胃腸など内臓からの刺激や化学物質・薬物の刺激、心理的・精神的な刺激、脳圧亢進などの直接的な刺激を受けて嘔吐を起こします。嘔吐中枢の周辺には唾液分泌中枢・血管運動中枢・呼吸中枢・前庭神経核などがあり、嘔吐中枢が刺激されるとこれらの中枢も同時に刺激されて発汗、顔色不良、唾液分泌、動悸、めまいや頭痛などの症状が表れます。

 嘔吐中枢を刺激するものの中でも脳圧亢進によるものには脳炎・髄膜炎、脳腫瘍、頭蓋内出血など重篤な神経疾患があります。薬物や化学物質が嘔吐を起こすのは、嘔吐中枢の近くにある化学受容体引金帯と言われる部分が体内を循環する薬物や化学物質を感知し嘔吐中枢を刺激し毒物を排除するために嘔吐を引き起こすのだとされます。精神的、心理的な刺激は大脳皮質からの刺激で、乗り物酔いなどは前庭神経からの刺激が嘔吐中枢を刺激することで嘔吐を起こすとされます。

 嘔吐は消化器疾患以外の呼吸器疾患や中枢神経疾患、代謝性・内分泌性疾患、頭部や腹部の外傷などでも起こることがあります。また嘔吐を来たす疾患の原因は年齢によってさまざまで診断を進めていく上で注意が必要です。

2004年4月13日掲載

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