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 乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因は、生前の病歴や死後の剖検によっても原因が明らかにされない疾患とされます。今まで元気だった乳児が突然死亡して家族や社会に与える影響は非常に大きいものです。家庭だけでなく保育園や託児所で突然死が発生すると責任問題に発展することもあります。

 突然死は睡眠中に発生するために早朝に発見されることが多いとされますが、昼寝の時にも発生します。SIDSの原因は明らかではありませんが、その発生には睡眠中の無呼吸が関係していると考えられています。健康な乳児でも睡眠時に無呼吸が見られることは珍しくありません。睡眠中には呼吸だけでなく血圧・脈拍・体温などが様々に変動しており、特に浅い睡眠やレム睡眠の時には変動が大きく、不規則な呼吸から無呼吸になることがあります。また乳児期早期には深い睡眠が少なくレム睡眠や浅い睡眠の割合が多く、さらに明け方にはレム睡眠が増加し、それだけ無呼吸の出現も多くなります。

 しかし、ほとんどの乳児が無呼吸から自然に回復するのに、SIDSを起こした児はなぜ回復しなかったのでしょうか。これまでに多くの調査研究がなされてきた結果、睡眠中の無呼吸からの回復が遅れるという、覚醒反応の異常がその原因であると考えられます。睡眠中に無呼吸になると、血中の酸素濃度の低下、二酸化炭素濃度の上昇に伴って、呼吸中枢が刺激され覚醒反応が起こって呼吸が再開するとされていますが、ここでなんらかの異常で覚醒反応が起こらなければ無呼吸からの回復が遅れて、さらに重篤な低酸素症となり、回復不能の状態に陥り死に至ると考えられます。

 覚醒反応の異常の背景には、呼吸中枢の未熟性や慢性的な低酸素環境に置かれることで覚醒反応が悪くなるなどと考えられています。しかし、SIDSは特別な子どもにだけ起こる特殊な病態ではなく、誰にでも起こる可能性を持った疾患であるとされるので注意が必要です。

2003年1月21日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.