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【答え】 卵管水腫 -適切な抗生物質投与を-

梶産婦人科病院 院長 梶 博(徳島市寺島本町東2丁目)

 質問内容だけで的確なお答えをすることは非常に困難ですが、可能な範囲で治療に結びつくような検討をしてみたいと思います。

 卵管に水がたまっているといわれたそうですが、これは卵管水腫(しゅ)と呼ばれる状態で、卵管に起きた炎症(卵管炎)の結果、卵管の一部が閉塞(へいそく)(通過性がなくなる)し、卵管の中に炎症性の液(膿(うみ)の場合もある)がたまったものと考えられます。

 まず、卵管炎についての説明から始めましょう。卵管炎は、いろいろな菌の感染によって引き起こされます。代表的なものとして淋(りん)菌やクラミジアなどがよく知られています。しかし、嫌気性菌や腸内細菌、連鎖球菌などによるものもあります。非常にまれですが、結核菌によるものもみられます。

 最初から卵管水腫として単独で発病することはなく、卵管炎があって初めて起きます。あなたの場合も卵管水腫にいたるまでに発熱、下腹痛、膿性の帯下(おりもの)などの頚(けい)管炎や子宮内膜炎、卵管炎の症状があったのではないかと推測されます。

 卵管炎には適切な抗生物質を十分な期間投与して治療することが必要です。治療が効果を上げているかどうかを知るためには血液検査が有用です。

 例えば、白血球数やCRP反応、血沈などによって炎症性の過程が持続しているかどうかが判定されます。

 あなたはその後、何度か同様の痛みを経験しているようですが、これは炎症性の過程が持続し、再燃を繰り返している可能性があります。治療にもかかわらず急性卵管炎の約4分の1は慢性化するといわれています。慢性化すると、慢性的な骨盤内疼(とう)痛、性交痛、不妊症、子宮外妊娠の原因となります。

 また、炎症以外の疾患、例えば子宮内膜症などの疾患の合併も考慮に入れる必要があると思われます。ですから現在のあなたの状態を詳しく評価し、治療計画を立てるべきではないでしょうか。

 そのためには腹腔鏡検査が最適です。腹腔鏡によって子宮や卵管の状態、またそれらの周囲の癒(ゆ)着の状態、子宮内膜症の有無などが分かりますから、治療計画が立てやすくなります。

 軽度の病変であれば腹腔鏡によって処置することも可能です。通常は抗生物質療法が有効なはずなのですが、もし感染が卵巣、卵管を巻き込んだ膿瘍(のうよう)を形成するようなものであったり、慢性化したために耐え難い腹痛が起きたりしているようであれば、手術の必要も出てきます。

 治療法の選択に関しては、あなたの将来の妊娠に対する希望なども考慮に入れなければならないと思われます。

徳島新聞2001年6月24日号より転載

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