徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 時折咳き込み眠れない

 34歳男性です。3年ほど前から朝方に咳(せき)が止まらず、のどがヒューヒュー、ゼーゼーと鳴り、目が覚めるようになりました。普段はなんともないのに、この咳が出ると眠れなくなり睡眠不足に悩まされています。今ごろのような季節の変わり目、寒暖の差が激しい時期によく起こります。また、激しい運動をしたときも同じような症状になります。咳が出ないようにする治療法はありますか。また、咳が出始めたらどのように対処すればよいのでしょうか。



【答え】 気管支喘息 -気道の炎症を薬で改善-

板東診療所 亀井 俊彦(鳴門市大麻町板東)
     
 お伺いした症状からは、気管支喘息(以下喘息)が考えられます。喘息は、気道と呼ばれる空気の通り道、特に気管支が狭くなって、呼吸が突然苦しくなる発作を繰り返す病気です。発作が起きると、息をするたびにヒューヒュー、ゼイゼイという呼吸音(喘鳴(ぜんめい))がしたり、粘り気のあるたんや激しい咳が続いたりします。

 相談者のように夜間から朝方にかけて発作が起こりやすく、冷たい空気、天気の変化などに誘発されることもよく知られています。日本では成人の約3%が喘息にかかっているといわれています。

【咳喘息】 普通の喘息とは違い、喘鳴がなく咳が長く続きます。この咳には、いわゆる咳止めは効果が少なく、喘息と同様に気管支拡張薬や吸入・経口のステロイド薬が有効です。

 咳喘息は、喘息の亜型あるいは喘息の前段階と考えられています。類似した慢性の咳にアトピー咳嗽(がいそう)がありますが、気管支拡張薬は効果がなく、多くの場合、抗ヒスタミン薬が有効です。長く続く咳には、呼吸器の病気以外に、薬の副作用による咳、胃液が食道に逆流するため誘発される咳などがあります。専門医に正しい診断をしてもらい、治療を受けることが大切です。

【運動誘発喘息】 この方のように運動することにより喘息発作が起こることもあり、運動誘発喘息といいます。マラソン、サッカーなどは発作を起こしやすく、水泳や剣道は起こしにくいスポーツです。

 運動で発作が起こるのは、息を弾ませるときに気管支が冷えたり、乾燥したりすることが原因と考えられています。このため、夏よりも冬の乾燥した寒い日に起きやすく、水泳は気管支の乾燥がないため起きにくいのです。

 喘息のコントロールが悪いほど、運動で発作が起きやすく、予防の第一は、喘息をきちんと治療することです。また運動前にウオーミングアップを十分に行い、夜間や冬季の運動時はマスクを使うことも良いでしょう。このようにしても発作が出るようであれば、運動前に気管支拡張薬などの吸入を行うと予防できることがあります。

 喘息の診断は、症状などから比較的容易にできますが、肺や心臓の病気などでも同様の症状がみられることがあり、最初に正しく診断を受けることが大切です。また、喘息に対する考え方は最近になって大きく変わり、治療法も非常に進歩してきています。

 喘息は、気道が狭くなり呼吸困難を起こす病気です。以前は、発作のときだけ、気道を広げる治療をすればよいと考えられていました。しかし、気道に喘息特有の炎症(気道に常に「擦り傷」ができているような状態)が慢性的に起きていることが分かり、そのためにわずかな刺激にも敏感に反応して気道が収縮するのだと考えられています。

 気道を拡張させるだけでなく、気道の炎症を改善することが喘息治療の基本です。炎症を抑える抗炎症薬(吸入ステロイドなど)と喘息症状を改善する薬(気管支拡張薬)を組み合わせて、喘息発作予防のために毎日使用することが大切です。それでも発作が起こった場合には、発作を抑えるための薬を使います。

 徳島県は、全国的にみても気管支喘息による死亡率が非常に高い県です。なるべく早く、呼吸器の専門医や内科系のアレルギー専門医を受診され、きちんとした治療を継続されることをお勧めいたします。

徳島新聞2006年6月11日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.