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【質問】左目に痛み、視力が低下

 67歳の男性です。10年ほど前に、風邪をひいた後に左目に痛みが起こり、医者に診察してもらった結果「角膜(黒目の部分)ヘルペス」(上皮型角膜病)と診断されました。治療しましたが再発を繰り返し、その都度、アシクロビル軟こうと抗菌点眼剤を1日4~5回使用しました。今までは、10日から2週間くらいで治まっていましたが、今回は、全く回復せず、視力も0.1以下に落ちています。最近は首筋、肩、胴にかけて凝りがひどい上に、朝から疲れが伴います。このまま失明するのではないかと憂うつな毎日です。ほかに何かよい治療法はないのでしょうか。



【答え】 再発する角膜ヘルペス -別の「実質型」に移行も-

徳島大学病院眼科 江口 洋

 角膜ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルスによって起こる角膜の病気です。このウイルスは、多くの人が幼少期の知らないうちに初感染し、その後は無症状のまま目の奥の神経に潜伏していますが、数十年たってから、何らかの誘因(感冒、発熱、ストレスなど)で再活性化され角膜に病巣をつくります。

 角膜ヘルペスには幾つかのタイプがあります。最も多いのが上皮型で、通常は片眼の角膜の表面に病巣をつくります。症状として、異物感(コロコロした感じ)、まぶしさや結膜(白目の部分)の充血がありますが、さほど視力が低下することはなく、強い眼痛を伴うこともありません。

 治療は、アシクロビル(ACV)眼軟こうを1日5回投与します。また細菌による混合感染予防のため、抗菌点眼薬を1日2~4回、追加投与します。適切に治療すれば、通常は約2週間で治りますが、2~3年ごとに再発する例が少なからずあります。

 残念ながら有効な再発予防法は確立されていないので、前記のような誘因を避けるため、規則正しい生活が大切です。それでも再発した場合は、その都度、同様の治療を施します。

 上皮型の次に多いのが、実質型角膜ヘルペスです。これはヘルペスウイルスに対する免疫反応の結果、角膜の内部が混濁すると考えられていますが、原因の詳細は不明です。

 結膜の充血と視力低下が2大症状ですが、さまざまな程度の炎症が起こり、強い眼痛や首から肩にかけて痛みを感じることもあります。治療はACV眼軟こうに加え、炎症の程度に合わせたステロイド点眼薬が必要になります。

 上皮型と実質型の見極めは、典型例では難しくありませんが、中には上皮型からいつの間にか実質型に移行するタイプもあり、とても厄介です。上皮型がACVの治療に反応しなくなり、視力も低下してきたときや、強い眼痛を自覚し始めたときは、実質型へ移行するタイプを考慮する必要があります。

 ACVは、1980年代になって使用され始めた抗ウイルス薬です。重篤な副作用がなく、現在ではACV眼軟こうが角膜ヘルペスに対する第一選択の薬になっています。

 ACVの登場で、角膜ヘルペスの重症例が減りましたが、問題がないわけではありません。軟こうゆえに1日5回の点入が決して心地良いものではなく、十分点入できていない方もいるようです。最近では、ACVでは治りにくいACV耐性株による角膜ヘルペスも出現しています。

 相談者は、これまでは再発する上皮型角膜ヘルペスの典型例だったと思われます。しかし今回は、単なる上皮型の再発とは少し印象が異なります。実質型へ移行するタイプを考える必要があります。そして、治療にステロイド薬を追加すべきかどうかが、今後の治療のポイントになります。なぜなら、ステロイド薬は実質型には不可欠ですが、上皮型には厳禁だからです。

 実質型に移行するタイプの場合、いつ、どのようなステロイド薬をどの程度使用するかの判断は、容易ではありません。安易な投与で病状を複雑にしたり、副作用が出現したりする可能性があります。今かかっている医師と相談し、必要なら専門病院を紹介してもらうことをお勧めします。

 また、少ないとはいえ、ACV耐性株による角膜ヘルペスの可能性も否定できません。その場合、ACV眼軟こうは無効で、治療は困難を極めます。個人的に海外の薬剤を取り寄せている角膜専門医や、ACVとは違う薬の研究・開発をしている大学病院のような研究機関に相談するのも一つの方法だと思います。

徳島新聞2004年5月30日号より転載

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