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【質問】 継続的服用の影響心配

 55歳の女性です。5年前から「メイラックス」という安定剤(抗不安薬)を服用しています。婦人科系の手術で約二週間入院した際、些細(ささい)なことが心配になったり、血圧の上昇や不眠が一時的に起こったりしました。主治医に安定剤を処方してもらって症状は治まりましたが、その後も継続して服用しています。昨年12月、副作用が出たわけではないのですが、「継続したら悪い」と自分で判断して1カ月間、服用を止めました。それが原因なのか分かりませんが、うつ的症状に似た精神状態になりました。再度服用を始め、約2週間で平常に戻りました。このまま安定剤を服用していいのでしょうか?



【答え】 安定剤 -徐々に減らすことが大切-

川村医院 土井 章良(名西郡石井町浦庄)

 文面から推察しますと、質問の女性は手術前、手術後の不安のため、些細なことが心配になったり、血圧の上昇や不眠が一時的に起こったりしたようです。このような状態を放置すると、動悸(どうき)、呼吸困難、胸内苦悶(くもん)など、恐怖感を伴った不安(パニック)発作が生じることも多々見られます。幸い、主治医の適切な判断によって不安、緊張、抑うつ、睡眠障害などに効能のある安定剤が処方され、症状はすぐに消失したものと考えられます。これは安定剤の素晴らしい効用があったためです。

 その後も服用を続けた経緯はよく分かりませんが、「副作用が出たわけでもないが、『継続したら悪い』と自分で判断して1カ月間、服用を止めた」のは誤りでした。安定剤の服用を急に中断すると、症状がぶり返し、以前にも増して自信を失うことが多々あります(反跳)。ときには震戦、不安、不眠、せん妄、幻覚などの禁断症状が出ることもあります。「うつ的症状に似た精神状態」になったのはそのためです。再度服用を始め、2週間で「平常に」戻っています。今後は症状がなくなって自信ができれば、主治医と相談して、計画的に徐々に安定剤を減らしていけばいいと思います。

 巷(ちまた)には「安定剤を服用したら呆(ぼ)ける」などの誤った副作用観や偏見があります。質問の女性が中断したのも、そのような心配があったからでしょうか。若い人でも、極度のストレスやトラウマが長期間持続すると、記憶中枢とされる海馬(かいば)などの脳が委縮することが実証されつつあります。老齢者では、強いストレスの持続こそ痴呆(ちほう)につながりやすいといえるかもしれません。ですから、本当に必要な人は服用をためらうべきではありません。

 さて、安定剤の長期服用による副作用の心配について述べます。精神神経用剤には、抗精神病薬、抗不安薬、抗燥薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、睡眠薬などがあります。質問の女性が服用しているロフラゼプ酸エチル(商品名メイラックス)などの安定剤や睡眠薬の多くはベンゾジアゼビン誘導体と呼ばれるもので、医師の判断、管理のもとに定量を服用する限り、非常に安全性の高い薬物です。臨床各科で広く使用されていて、多くの人は安定剤というと、この系統の薬をイメージされるのではないでしょうか。

 必要であれば長期服用も問題ないと思われますが、私たちが最も頭を痛めているのは、これらの安定剤の乱用や依存を完全にはチェックできないことです。緑内障や前立腺肥大症など身体疾患のある人は、各主治医にチェックしてもらう必要があります。そのほか、老齢者では薬物の血中濃度が高くなりやすく、ふらつき、転倒しやすいなどの副作用が出やすかったり、この女性のように長期服用後、急に中断すると反跳現象も生じたりします。

 以上のことをまとめますと、安定剤はとりあえず不安、抑うつ、不眠、恐怖感などの苦痛感を緩和してくれます。そこで冷静な自分を取り戻します。これが、効用です。しかし、万能薬ではありません。投薬だけで治らない人は、主治医との共同作業(精神療法やカウンセリング)で根気よく、それぞれの症状や目前の現実に対処していく必要があります。すぐ効いたような感じがするので、多くを期待し過ぎると、その場限りの症状の解消を求めて、次々と自分勝手に服用量を増やして依存症になります。この点からも、アルコールとの併用は非常に危険です。

徳島新聞2003年4月6日号より転載

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