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【質問】 右耳が全く聞こえない

 20代の男性です。流行性耳下腺炎にかかり、右耳が全く聞こえなくなりました。「ムンプス難聴」と診断され、めまいなどが起こる遅発性内リンパ水腫にかかる可能性もあるとのことでした。どれくらいの人が遅発性内リンパ水腫にまで発展するのでしょうか。予防する方法はないのでしょうか。正常な左耳に起こらないかも心配です。



【回答】 ムンプス難聴 -ストレス除き悪化防止-

徳島大学病院 耳鼻咽喉科頭頸部外科講師 阿部晃治

 流行性耳下腺炎は別名ムンプスとも呼ばれますが、一般的には、おたふくかぜという名称の方がなじみがあるかもしれません。ムンプスウイルスの感染症で、2~3週間の潜伏期を経て発症し、片側あるいは両側の耳の下や、あごの下の唾液腺が腫脹(腫れる)するのが特徴です。子どもに多い病気ですが、幼少時に感染しなかった場合は成人になってからでも発症します。

 症状によって診断しますが、30~40%は不顕性(ふけんせい)感染といって、症状が軽く感染したことを自覚しないうちに治る場合もあるため、確定診断には血液検査でウイルスの抗体価を測定します。1989年にワクチン接種が義務化されてからは患者数が減少していましたが、93年にその義務化が中止されて以降、増加傾向にあります。

 流行性耳下腺炎の合併症には、髄膜炎、睾丸炎、難聴が知られています。質問の方も、流行性耳下腺炎にかかった後に難聴を発症していることから、合併症が起こったと考えられます。流行性耳下腺炎による難聴をムンプス難聴と呼び、感染した1万5千人に1人程度の発症頻度といわれています。

 難聴の特徴は▽一側性(片側に発症)▽高度難聴か全く聞こえない▽治療しても改善しない-が一般的です。厚生労働省の特定疾患急性高度難聴調査研究班によるムンプス難聴診断基準では、唾液腺の腫脹4日前から腫脹出現後18日以内に発症した急性高度難聴、もしくは唾液腺の腫脹が明らかでなくても、血液検査でムンプスウイルスが検出された急性高度難聴をムンプス難聴と定義しています。

 また、一側高度難聴の発症後、長い年月を経てから回転性めまい発作や聴力低下を来し、症状が繰り返すことがあります。これを遅発性内リンパ水腫と呼びます。一側高度難聴に遅発性内リンパ水腫が発症する頻度は15~20%といわれています。原因は、耳の奥の内耳と呼ばれる部分のリンパ液が過剰に増えることにより、めまいや難聴の症状を引き起こすと考えられています。

 高度難聴側が原因で起こる同側型と、聞こえの良い側が原因で起こる対側型とに分類されます。まれに両側型もあります。同側型の場合は既に難聴になっているため、回転性めまい発作の繰り返しが主な症状で、対側型の場合は回転性めまい発作の繰り返しと、良い耳の聴力の変動が症状となります。

 治療ですが、同様の病態を示すものにメニエール病があり、遅発性内リンパ水腫の治療はメニエール病に準じた治療になります。

 薬物治療としては、発作期には炭酸水素ナトリウムの点滴、内耳循環改善薬、ステロイド、鎮暈薬、マイナートランキライザーなどを用います。慢性期にはイソソルビド、利尿剤などを用います。背景に自律神経失調やストレスがある場合は、自律神経調節薬や抗不安剤などを用います。

 薬物治療に抵抗性がある場合は、内リンパ嚢(のう)開放術やゲンタマイシン鼓室内投与などの手術治療を行うこともあります。

 確立された予防方法はありませんが、体調やストレスなどが発症誘因となりやすいため、普段から規則正しい生活をして、ストレスをためないように心掛けることが重要だと思います。

徳島新聞2011年1月9日号より転載

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