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【質問】 左手の指がしびれる

 40代の男性です。15年ほど前から硬式テニスをしていますが、左手の指がしびれ、頸椎(けいつい)ヘルニアと診断されました。病院では首の牽引(けんいん)をしていますが、ラケットも握れない状態です。今後、テニスはできないのでしょうか。治療方法や日常生活で気を付ける点を教えてください。



【答え】 頸椎椎間板ヘルニア -保存療法駄目なら手術も-

まつか整形リハビリクリニック 院長 松家秀彦(徳島市吉野本町)

 頸椎椎間板(ついかんばん)ヘルニアと診断されて左手の指がしびれるとのことですが、指以外に上肢の痛みやしびれはないでしょうか。

 脊椎(せきつい)には、上下の骨(椎体)の間に椎間板があり、その役割は▽脊椎の支持性と運動性▽加重や衝撃の吸収・緩衝-です。椎間板の中心部には、白いゲル状の「髄核(ずいかく)」と、その周囲を取り囲むように同心円状に配列したコラーゲン繊維や軟骨組織からなる「繊維輪」で構成されています。

 外傷で急激な力が加わったり、運動・作業で繰り返して負荷が加わったりして繊維輪の一部が断裂し、中の髄核が後方の脊髄(せきずい)・神経根のある脊柱・椎間孔へ脱出した状態が椎間板ヘルニアです。

 頸椎椎間板の髄核が後外側に脱出し、神経根を圧迫した状態(神経根症状)では、肩甲骨周辺の疼痛(とうつう)、上肢へ放散する疼痛、前腕や手指のしびれ・知覚障害、筋の脱力・委縮などを認めます。髄核が脊柱管内の中央に脱出し、脊髄自体を圧迫した状態(脊髄圧迫症状)では、手指、手掌部全体に手袋を着けたようなしびれ感がみられます。症状が進行すると、更衣、食事動作時の障害や歩行障害がみられます。その他には、非尿困難・頻尿などの排泄(はいせつ)障害も伴います。

 頸椎椎間板ヘルニアがよく起きるのは40代で、部位は第5、6頸椎、第6、7頸椎、第4、5頸椎の順にみられます。

 ご質問の方のように左手の指がしびれている場合、▽左手のどの指がしびれているか▽手のひら全体がしびれているのか-によって、神経根・脊髄の圧迫を受けている程度が変わってきます。ラケットも握れない状態であればかなりの筋力低下も推測され、神経根・脊髄への圧迫が強いと考えられます。障害部位の診断にはMRIが有用です。

 また、硬式テニス歴が長いことから▽人さし指、中指、薬指を中心にしびれを感じる場合は、手関節での正中神経障害である手根管症候群▽薬指、小指を中心にしびれや筋力低下を感じる場合は、ひじ内側部の尺骨(しゃっこつ)神経障害である肘(ちゅう)部(ぶ)管症候群▽肘外側部に圧痛や手関節を背屈時に疼痛がある場合は、上腕骨外上顆(か)炎(テニス肘)などの頸椎以外の障害も考えられます。

 頸椎椎間板ヘルニアの保存療法には、頸椎の安静(頸椎カラーの装着など)、頸椎牽引・温熱療法、消炎鎮痛剤・筋弛緩(しかん)剤の内服など薬物療法があります。

 保存療法の効果がなく夜間痛を伴い、日常生活に支障を来すような激しい上肢痛・筋力低下の状態では、手術が必要な場合もあります。

 日常の注意点としては▽歯科治療や散髪・美容室であおむけになる(シャワーで首を反らすことも)▽電球交換や高い所の物をとる-など、首を反らして長時間上を向く状態は避けましょう。猫背は、首が前に傾くため前を向こうとすると首を後ろへ反らす姿勢となり首に負担をかけます。猫背でパソコンモニターを見ると、首を上向きに反らしてしまうので注意してください。

 睡眠時の枕の高さは▽あごを引く姿勢となる高い枕は使用しない▽頭の下にバスタオルを敷いて布団と頸椎の角度を15度ぐらいにする▽横向きで寝る時は布団から肩幅ぐらいの高さで首が横に曲がらないようにする-ことに注意してください。

 左手の指がしびれ、握力が低下する状態では、首を後ろに反らしたり回旋したりするスポーツは中止してください。MRI検査で障害部位の診断を受け、保存療法で効果がない場合は、脊椎外科専門医へ相談する方がよいと思います。


徳島新聞2010年12月26日号より転載

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