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【質問】 立ち座りがつらい

 70代の男性です。数年前から膝(ひざ)が痛く、整形外科で変形性膝関節症と診断されました。市販薬や漢方、サプリメント、水中歩行などを試みましたが、効果はありません。立ったり座ったり、階段を上り下りしたりすることがつらく、痛みが座骨にまで広がって今後が心配です。今は散歩や屈伸運動をしていますが、対策があれば教えてください。



【答え】 変形性膝関節症 -筋力鍛えストレス軽減を-

きたじま田岡病院医師 廣田茂明(板野郡北島町鯛浜)

 膝関節は、大腿骨(だいたいこつ)(太ももの骨)、脛骨(けいこつ)(すねの骨)、膝蓋骨(しつがいこつ)(皿の骨)の三つの骨が組み合わさった関節です。それぞれの骨が接する関節面は関節軟骨で覆われていて、骨と骨がごりごりとこすれ合うようなことはありません。歩いたり階段を上ったりという普段の生活動作で膝関節には体重の数倍もの力がかかりますが、関節軟骨の働きによって痛みがなく滑らかに曲げ伸ばしができ、体を支えることができるのです。

 この関節軟骨が、年齢的な変化や荷重ストレス、炎症などで徐々に劣化してすり減ってしまうのが変形性膝関節症で、患者は日本に700万人いると推定されています。

 変形性膝関節症になると膝が痛くなり、特に曲げ伸ばしするときや体重がかかったときに強い痛みを生じます。また、膝の曲げ伸ばしがしにくくなります。炎症が強くなると膝に水がたまってはれます。変形が進むと膝できしむ音がしたり、O脚になったりします。このような症状のために立ち座りや歩行が障害されて、外出や日常生活が不自由になります。

 病院の治療でも、すり減った関節軟骨を元通りに戻すことはできません。治療の目標は膝の痛みなどの症状を和らげ、立つ、座る、歩くなどの膝の機能を回復することです。

 治療は保存治療と手術治療がありますが、いずれにしても運動療法が重要です。膝を伸ばす太ももの筋力強化運動、負担にならない範囲での歩行運動と膝関節の曲げ伸ばし運動は、痛みの軽減や膝機能回復に効果があることが知られています。

 太ももにある大腿四頭筋の筋力がつくと、膝の曲げ伸ばしが安定して関節軟骨のストレスを減らすことができます。また、膝を適度に動かすことで関節液が循環し、関節軟骨に酸素や栄養を行き渡らせます。関節周囲の血行が改善して痛みが和らぎす。

 お勧めの大腿四頭筋運動を紹介しましょう。自宅でも簡単に行えます。

 まず、あおむけに寝て片方の足の膝を立てします。もう一方の足は膝を伸ばしたまま、かかとを床から10cm上げ、そのまま5秒間保った後で下ろして休みます。これを20回繰り返します。同様に左右の足を替えて20回繰り返します。

 この運動を朝夕2回、ご自分の筋力に応じて徐々に始め、まずは2週間続けてください。きっと効果を実感できると思います。

 膝の痛みでお困りのときは、整形外科を気楽に受診してください。病院ではレントゲンやMRIなどの検査で、膝関節の骨、軟骨、靭帯(じんたい)、半月板などの状態を調べ、症状に応じてシップや消炎鎮痛剤の投薬、装具やサポーターの処方、関節注射、リハビリなどの治療を行います。また、高度の変形や障害があれば、関節鏡手術、矯正骨切り術、人工関節置換術などの手術治療を行います。

 治療によってすべての症状を消し去ることができるわけではありませんが、趣味やスポーツ、旅行を楽しめるようになった方もたくさんおられます。整形外科が皆さまのより豊かな暮らしの一助になれば幸いです。

徳島新聞2010年6月27日号より転載

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