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【質問】 何の病気考えられるか

 60代の女性です。4月に受けた健康診断の血液検査で、CEA(がん胎児性抗原)の値が高く(CLIA法で6.9)、再検査の指示がありました。ほかは基準値内でした。大腸潜血、胸部レントゲンは昨年9月に受診し、ほかのがん検診でも異常はありません。たばこは吸いませんし自覚症状もありません。CEA CLIA法はどんな検査で、どんな病気が考えられますか。がんの可能性があるのかを含めて、対応を教えてください。



【答え】 CEA CLIA法で高い値 -大腸がんなどの疑いも-

大久保医院 大久保 卓(阿波市吉野町西条)

 ご質問のCEAとは、胎児の大腸組織と大腸がんの組織に共通して存在する糖タンパクです。人間ドックなどの健診では、がん検診の一つとして腫瘍(しゅよう)マーカーといわれる血液検査を行うことがありますが、CEAもその中の一つで、比較的古くから行われています。

 ただ、CEAの値が基準値(CLIA法では5.0以下)よりも高い人が、すべてがんにかかっているということではありません。がん以外の病気にかかっている人でもその値が高くなることもあります。また、健康な人でも3%前後の人は基準値よりも高い場合があり、喫煙者、高齢者、妊婦などは高くなるとされています。

 ご相談の方は喫煙していないとのことですが、周りに喫煙者が多い場合には、受動喫煙といって周囲の煙を吸っていることもあります。その場合には、本人が喫煙していなくても喫煙しているのと同じ状態になっている可能性もあります。

 一般的にCEAの値が高くなる病気には多くの種類があり<別表参照>、CEAが高いというだけでどのような病気にかかっているかを診断することは、医師にとっても非常に難しいことです。

 ただ、検診でCEAを測定する目的は、大腸がんを見つけるためであることが多く、もし最近、大腸の内視鏡検査などの精密検査を受けていない場合は、かかりつけ医か消化器科の医師に検査をお願いしてみてはどうでしょうか。

 相談者は便潜血反応には異常がなかったとのことですが、それだけで大腸に異常がないと言い切ることはできません。できれば、食道、胃の内視鏡検査も受ける方が安心できると思います。

 このほか、甲状腺や肝臓、胆道、すい臓などの超音波検査や腹部CT検査、胸部レントゲン検査、肝臓、すい臓、甲状腺などの機能検査(血液検査)や糖尿病の検査、女性の場合は乳腺の検査や、婦人科での子宮・卵巣の検査も受けてみてはどうでしょうか。

 これらの検査で特に異常が認められない場合には、相談者はCEAの値が基準値の2倍以内の比較的低値ですので、同一の医療機関でCEAの値が上昇していくかどうか、一定の間隔で経過をみてもらうのも一つの方法です。

 なお、これらの検査で特に異常は発見できないものの、どうしてもがんが心配な人は「ペットCT」という、少量の放射性物質を使った検査を徳島大学病院で受けることもできます。ただこの検査は通常、公的な医療保険は使えず、やや高額な検査費は全額自己負担となります。この検査を受けたい場合もかかりつけ医にご相談されることをお勧めします。

CEAが高値になることがある病気や状態
がん大腸・直腸がん、胃がん、食道がん、転移性肝がん、胆道がん、膵(すい)がん、肺がん、甲状腺がん、泌尿器がん、乳がん、子宮がん、卵巣がんなど
がん以外結核、肺炎、気管支炎、肺気腫、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、慢性膵炎、潰瘍性大腸炎、糖尿病、甲状腺機能低下症、腎不全、膠原(こうげん)病など
その他喫煙者、高齢者、妊婦など


徳島新聞2010年5月23日号より転載

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