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【質問】 血液検査で正常値上回る

 60代の男性です。先日、基本健診で前立腺がんの検査を受け、血液検査で、正常より少し数値が高いと言われました。今のところ症状はないのですが、様子をみていいのでしょうか。前立腺がんの症状や、治療法などについても教えてください。



【回答】 前立腺がん-直腸指診などで有無確認-

徳島大学病院泌尿器科 金山博臣

 前立腺は、男性の膀胱(ぼうこう)の出口、尿道の周囲にあるクルミ大の臓器で、精液の成分である精漿(せいしょう)をつくっています。代表的な疾患に前立腺肥大症、前立腺がん、前立腺炎があります。 膀胱(ぼうこう)の出口、尿道の周囲にあるクルミ大の臓器で、精液の成分である精漿(せいしょう)をつくっています。代表的な疾患に前立腺肥大症、前立腺がん、前立腺炎があります。

 前立腺炎は若年者にも発症しますが、前立腺肥大症や前立腺がんは高齢者に多く、通常50歳を超えると発症し、年齢が高くなるほど頻度が高くなります。前立腺肥大症と前立腺炎は良性疾患ですが、前立腺がんは悪性腫瘍(しゅよう)で、骨に転移しやすく、進行すると生命にかかわります。

 ご相談の方は、基本健診で前立腺がんの血液検査を受けたとのことですが、前立腺がんの腫瘍マーカーである「前立腺特異抗原(PSA)検査」のことと思います。

 PAともいい、多くの自治体でこの検査による前立腺がん検診が行われています。4(ng(ナノグラム)/ml(ミリリットル))を超えると前立腺がんの可能性があり、4~10では約30%に前立腺がんが発見され、値が高いほどがんや進行がんの可能性が高くなります。前立腺がんの早期発見のためにはPSA検査が重要です。50歳を超えると年1回のPSA検査が推奨されています。

 早期がんの場合は無症状です。進行すると、尿道や膀胱に広がって排尿障害や血尿になったり、骨に転移して腰痛が出現したりします。症状が無いから前立腺がんではないとは言えません。前立腺肥大症を伴う場合は、早期がんでも排尿障害や頻尿などの症状が出現します。

 検診などでPSAが4を超えたり、排尿障害があったりする男性には、PSA検査と直腸指診、超音波検査を行います。直腸指診では、肥大症は平滑で弾力がありますが、がんは凹凸不整で硬く触れます。早期がんの場合は、直腸指診や超音波検査で異常がみられない場合もよくあります。

 PSAが4を超えたり、直腸指診や超音波検査で前立腺がんが疑われたりした場合は、組織検査を行います。麻酔をして前立腺の10~12カ所から針で組織を採取することで、がんの有無と悪性度が分かります。

 がんが発見されると、さまざまな検査でその広がりや転移の有無を調べます。なお、PSAが4を超えていても、前立腺肥大症や前立腺炎が疑われる場合には組織検査をせずに定期的なPSA検査で様子をみることもあります。

 治療法は、がんの悪性度、転移の有無、患者の年齢、合併症の有無などを参考にして選択します。早期がんの場合、75歳以下では、主に根治の期待できる手術や放射線治療が選択されます。高齢者や合併症のある場合、転移がある場合などはホルモン治療が選択されます。最終的には患者の希望をもとに治療法を決めます。

 手術は、前立腺と精嚢を摘除し、膀胱と尿道をふん合します。10~14日程度の入院が必要です。放射線治療には外照射療法と、小さなカプセルを数十個以上、前立腺に挿入する小線源療法があります。外照射療法は通院で治療できますが、小線源療法では4日程度の入院が必要です。ホルモン治療は、男性ホルモンが前立腺がんに作用しないようにする治療で、精巣を摘出したり、1~3カ月ごとの皮下注射や内服薬を用いたりします。

 早期がんで悪性度が低くPSAが低い場合には、治療をせずに定期的なPSA検査で様子をみることもあります。

 相談の方は初めてPSA検査を受けられたものと思います。自分で判断せず、まずは泌尿器科専門医を受診してください。PSA検査、直腸指診、超音波検査の結果などにより、医師と相談の上、組織検査をするかどうか決めていただければと思います。

徳島新聞2009年6月7日号より転載

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