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【質問】 胆石見つかり 痛みないが…

 50代の男性です。先日、人間ドッグで胆石と診断されました。今のところ痛みはなく、「様子を見ましょう」と言われたのですが、不安です。痛みがなくても手術しなくていいのでしょうか。手術以外にも治療法があれば、教えてください。



【答え】 無症状胆石-エコー検査で経過観察-

徳島市民病院 肝臓・胆嚢・膵臓外科 三宅秀則

 ご質問から判断しますと、胆嚢(たんのう)内にできた症状のない胆石、いわゆるサイレントストーン(無症状胆石)だと思われます。 胆嚢(たんのう)内にできた症状のない胆石、いわゆるサイレントストーン(無症状胆石)だと思われます。

 胆石は、肝臓で作られる胆汁の成分の一部が固まったもので、胆汁の流れ道である胆管と胆嚢にできます。胆管にできたものを胆管結石、胆嚢内にできたものを胆嚢結石と呼びます。胆管結石には、肝臓内の胆管にできる肝内結石と、肝臓外の胆管にできる総胆管結石があります。

 胆石症のうち、胆嚢結石が約8割、胆管結石が約2割(肝内結石は1~2%)です。胆管結石は胆管炎、膵(すい)炎など重篤な合併症を生じやすく、症状がなくても治療が必要です。一方、胆嚢結石は、痛みなどがある場合に治療の対象となります。

 今回は、症状のない胆嚢胆石「無症状胆嚢結石」について説明します。

 検診や人間ドックなどで腹部超音波検査が取り入れられたことで、症状もなく偶然発見される無症状胆嚢結石が少なくありません。しかし、痛みなどが出る有症状化率は年に1~2%で、日本人の胆石保有者の8割は、無症状のままといわれています。したがって無症状胆嚢結石は治療することなく経過を観察してよいとされています。

 ただ、胆嚢結石の病態はさまざまで、無症状胆嚢結石でも予防的に胆嚢摘出が推奨される場合があります。それは、胆嚢癌(がん)の合併が完全に否定できない場合と、胆嚢癌発生高危険群とされている病態を合併している場合です。

 前者は、胆嚢内に結石が充満したり、胆嚢の萎縮(いしゅく)や変形が著明だったりして、胆嚢の様子が超音波検査でも分からないといった場合です。後者は、胆嚢癌発生のリスクが高いといわれている、胆嚢の壁が石灰化していたり、先天的な胆管形態異常を合併していたりする場合などです。

 胆石によって胆嚢癌発生頻度が増加するという報告はなく、現在のところ、胆石が胆嚢癌の直接的な原因となることは否定的です。しかし手術を受けられた胆嚢癌患者さんの約35%が胆石を合併していることも事実です。ですから、症状がなくても放置するのではなく、年に1~2回のエコー検査で経過を観察することが大切です。

 胆嚢結石に対する治療方法は、手術療法と非手術療法(胆嚢温存療法)に分かれます。手術は、胆石のみではなく、胆石ができた原因である胆嚢も摘出するのが原則です。最近は開腹による摘出ではなく、腹腔鏡というカメラをおなかの中に挿入して、胆嚢を摘出する術式が主流です。

 しかし、負担が少ないとはいえ、1%以下でも合併症が認められ、100%安全であるとは言えません。必要のない手術は受けるべきではないでしょう。

 胆嚢温存療法では、主に経口結石溶解剤投与と体外衝撃波による結石破砕術があります。前者は、約1割の限られた結石にしか適応されません。半年以上薬を内服する必要がある上、胆石の溶解率は2割程度しかなく、2~3割の再発率を認めています。後者は、破砕後の小結石が胆嚢の出口や胆管に詰まって合併症を生じる可能性がある上、再発率が高いとされており、無症状胆嚢結石には原則適応になりません。

 結論を申しますと、無症状胆嚢結石の場合、専門医を受診し、胆嚢の様子が十分検査で分かり、胆嚢癌の疑いがないのであれば、年に1~2回のエコー検査による経過観察でよいと思われます。

20090531胆石の種類と位置

徳島新聞2009年5月31日号より転載
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