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【質問】 乳房に鈍い痛みを感じる

 31歳の女性です。2週間前から1日に数回、左乳房にじわじわと鈍い痛みを感じるようになりました。気になって初めてマンモグラフィー(乳房のレントゲン)検査を受けたところ、左乳房に脂肪腫があるものの、治療は必要ないと言われました。今年6月に授乳をやめたので、それが関係しているのかもしれませんが、今も痛みは消えません。このままにしてよいのでしょうか。また、乳がん検診は2年に1回でよいと言われましたが、脂肪腫がある場合でも、それでよいのでしょうか。



【答え】 脂肪腫 -良性で治療の必要なし-

健康保険鳴門病院 副院長 鎌田 正晴

 乳房の組織は、卵巣から分泌される女性ホルモンにより刺激を受け、増殖したり小さくなったり、浮腫状になったりを繰り返しています。特に、排卵期から次の月経にかけての時期は女性ホルモンが増え、痛みを感じる女性が多いようです。これらは生理的変化であり、全く問題ありません。

 また、この生理的変化とは別に乳腺症があります。乳腺症は、30代や40代の女性によく見られる良性の疾患で、乳腺疾患の中で最も頻度の高いものです。症状としては、しこりと痛みが多く、乳頭からの異常分泌が見られることもあります。

 これは乳腺の上皮やそれを取り巻く組織が、異常に増殖したり、逆に萎縮(いしゅく)したりすることによって、しこりなどを作るものです。また異常の起こる場所や起こり方によってさまざまな病態を示し、ほとんど正常と言っていいものから、がんとの鑑別が難しいようなものまで幅広く含まれています。この乳腺症も、痛みが強く日常の生活に支障がある場合以外は、特に治療の必要もありません。

 しかし、少ないとはいえ、痛みから見つかる乳がんもあるので、慎重な検査が必要です。そのためマンモグラフィーや超音波検査などの画像診断が行われます。さらに異常が疑われる場合は、針を刺して細胞を採取する穿刺(せんし)吸引細胞診や、しこりの一部を採取する検査が必要なこともあります。

 乳房の痛みを訴えて来院する患者さんのほとんどは、乳がんの不安から痛みに過敏になっています。このため、視触診と画像診断によって乳がんの可能性が少ないことを説明するだけで、痛みが軽快することはよくあることです。相談者はマンモグラフィー検査によって乳がんが否定されており、6月まで授乳していたとのことですから、ホルモンの変化が痛みと関係しているのかもしれません。

 脂肪腫が見つかったということですが、脂肪腫は良性の腫瘍(しゅよう)で治療の必要はなく、痛みとも関係ないと考えられます。また脂肪腫があるからといって特別な検査やたびたびの検診が必要ということもありません。

 乳がんは、早期発見により治りやすいがんの一つです。乳がん検診は、2004年の厚生労働省の通達により、40歳以上の女性に2年に一度のマンモグラフィーと視触診の併用検診が推奨されています。これは40歳以上の女性では、マンモグラフィー併用検診により乳がんの死亡率が下がることが証明できたためです。また、費用負担の面にも配慮して、2年に1回の検診間隔となっています。

 相談者は31歳とのこと。乳がんにかかる女性の比率は、30歳以降から増えてくるので、早期発見のためには、当然検診が必要です。しかし実は、30歳代の女性に対する有効な検診方法はまだ確立されておらず、乳腺の濃さや家族歴、初産年齢、出産経験といったリスクの有無など、個々に検診方法や検診間隔を決めることになりますので、担当の医師に相談するのが一番だと思います。最後に、月1回、月経直後に自己触診することをお勧めします。

徳島新聞2008年11月2日号より転載

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