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【質問】 62歳母 最近疲れやすい

 62歳の母のことです。最近疲れやすく、内科で診てもらったら心臓肥大と言われました。特に治療の必要もなく、無理をしないようにとだけ言われましたが、肥大した心臓は放っておいても小さくなるのでしょうか。また、生活の中で気をつけることがあれば教えてください。



【答え】 心臓肥大 -心エコー検査で解明を-

惠美クリニック 惠美 滋文(名西郡石井町)

 心臓は、正常ではその人の握りこぶしくらいの大きさで、全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。心臓肥大があるということは、何らかの原因で心臓に負担がかかっている可能性が高いということです。心臓が元気なうちは症状がないのですが、病態が進行すると疲れやすくなり、次第に、息切れや呼吸困難が出現するようになってきます。心臓肥大を起こす原因によっては、重篤な心不全や不整脈に至る場合もありますので、注意が必要です。

 一般に、健康診断や病院を受診した際に「心臓肥大」といわれるのは、胸部レントゲン写真や心電図で判断されることが多いのですが、注意しなければならないことがあります。

 胸部レントゲン写真では、十分に息を吸った状態で撮影ができていなかったり、肥満や加齢で心臓が横に向いていたりする場合、見かけ上、心臓肥大のように見えることがあります。また心電図は、心臓の電気的な現象を記録するのですが、胸壁の薄いやせ型の人は、体表の心電図電極と心臓の距離が近いため、心電図波形の揺れが大きくなりやすく、心臓肥大がなくても「心臓肥大の疑い」と判断されがちです。

 このような場合、心エコー検査が極めて有用な検査となります。安全で手軽に行える検査で、心臓の肥大や拡大を正確に評価するだけでなく、どのような原因で心臓肥大が起こっているのか、さらには、心機能も評価できます。

 相談者の母親が、医師から、特に治療の必要もなく、無理をしないようにとだけ言われたのでしたら、「心臓肥大の疑い」である可能性が高いのかもしれません。念のために一度、心エコー検査を受けることをお勧めします。本当に心臓肥大があるのか、あるとしたらどのような原因で起こっているのかを評価することが大切です。その原因や程度によって、生活をしていく上で気をつけることも変わってきます。

 心臓肥大がある場合、放っておいて小さくなるということはまずなく、原因となっている疾患を治療することが大切です。軽度の肥大ならば負担を減らせば元の大きさに戻る可能性がありますが、負担の程度や原因によっては、難しい場合もあります。

 心臓肥大を起こす原因はさまざまです。高血圧症に伴うものが代表的ですが、心臓弁膜症や心筋症などの特別な心臓疾患に由来することもあります。心臓以外でも、甲状腺疾患や脚気(かっけ)などの全身疾患で起こる場合があります。

 一般には、高血圧症が最も多く、血圧の管理が大切となります。近年、開発されたレニンアンジオテンシン系に作用する降圧剤は、他の降圧剤よりも心肥大退縮効果が強いといわれています。相談者の母親に高血圧症があるか否かは分かりませんが、もしあるようでしたら、一度主治医の先生と相談してみてはいかがでしょうか。

徳島新聞2008年11月9日号より転載

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