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【質問】 予防接種の適切な時期は

 小学生の娘を持つ父親です。今年は、早くも徳島県内の小学校で、インフルエンザによる学級閉鎖があったと聞きました。娘も毎年、2回の予防接種をしていますが、そんなニュースを聞くと、急がなければいけないと思います。ただ、予防接種をするのが早すぎて、流行シーズンが終わる前に、免疫が切れてしまわないか心配です。春先に流行することもあるので、12月になってから予防接種をしたほうがいいのでしょうか?



【答え】 インフルエンザ -今すぐでも流行期間に効果-

兼松小児科 兼松 宏(鳴門市撫養町)

 最初にワクチンのことから説明します。現在一般に接種されているインフルエンザワクチンは、ウイルスのA型およびB型株を不活化した後に希釈調整して作られます。

 ご存じのように、A型には香港型(H3N2)とソ連型(H1N1)があり、流行の型を予想して各メーカーが同一内容のワクチンを製造しています。現在のワクチンはA香港型とAソ連型が混合されています。

 小児の場合は原則として2回皮下接種します。その間隔は1-4週(3-4週が最適)。接種量は1歳以下の場合0.1ミリリットル、1-5歳で0.2ミリリットル、6-12歳で0.3ミリリットルであり、13歳以上になると成人と同じように0.5ミリリットルになります。

 予防効果は、3週間の間隔で2回接種した場合、1カ月後に被接種者の77%が有効水準に達し、3カ月後では78.8%、5カ月後では50.8%になるとの報告があります。効果は、流行ウイルスとワクチンに含まれたウイルスの抗原型が一致したときにおいて、3カ月続くことも明らかになっています。

 インフルエンザ予防接種の効果についてはさまざまな議論がありますが、残念ながら麻疹(ましん)やポリオのワクチンと比べると効果が低く、少し前の厚生労働省の報告書では、6歳未満の小児の有効率は22-25%になっています(高齢者では34-55%)。また別の報告では2歳以上の小児でのワクチン有効率は33%となっています。

 このように必ずしも高いとはいえなくても、ワクチンの副反応の程度や頻度は高くなく、接種したグループと接種していないグループとでは、統計学的に予防効果に差が認められるので、医師や研究者たちはワクチン接種を心がけるように呼びかけています。

 感染経験の少ない児童生徒は、一般にインフルエンザに感染しやすい傾向にあります。学校など集団生活の場がウイルスの増殖場所となり、従って児童生徒によってインフルエンザが学校などから社会に広がっていくという考えがあります。しかし、ワクチン接種率と学級閉鎖期間の関係についての調査では、学級閉鎖日数はワクチン接種の高い年度では明らかに少ないことが報告されています。

 インフルエンザの潜伏期は通常1-4日で平均2日といわれています。患者からウイルスが排出されるのは発病から3日間が最も多く、7日間程度持続します。感染は飛沫(ひまつ)によるものであるのはご存じのとおりです。

 ワクチンを接種して効果が出るのには2週間ほどかかります。最近は毎年1月下旬-2月上旬にインフルエンザ流行のピークがありましたが、今年は早くも徳島市内の小学校で学級閉鎖があったように、流行が早いことが予想できます。ワクチンの効果は接種後次第に減少していきますが、今接種しても予想される流行の期間中は効果があると考えてもよいと思われますので、お嬢さんはやはり早めに接種されたのがよいのではないでしょうか。

徳島新聞2008年11月16日号より転載

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