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【質問】 食後、しくしくと胃が痛む

 43歳の男性です。昨年の健康診断では何も異常がなかったのですが、今年は萎縮性胃炎と言われました。食後、しくしくと痛む感じはあったのですが、薬を飲めばなんとなく良くなったように思い、大して気にしていませんでした。委縮性胃炎は胃がんに進むのでしょうか。食事などで回復させることはできるでしょうか。また、定期的に胃カメラなどの検診を受けようと考えていますが、どの程度の間隔をあけて受ければいいのでしょうか。そのほか生活面で注意することがあれば教えてください。



【答え】 萎縮性胃炎 -ストレス避け規則正しく-

徳島県総合健診センター 本田 浩仁

 ご質問の文面だけでは、健診をエックス線検査(胃透視)でされたのか、内視鏡検査(胃カメラ)でされたのかはっきりしません。しかし、いずれにしても萎縮性胃炎を指摘されたとのことですので、胃粘膜にピロリ菌が感染している可能性が高いと思われます。

 また、服用されている薬が病院で処方されたものなのか、市販薬かもはっきりしませんが、昨年も今年も健診を受けられた上でのことですので、このまま様子を見られてもよいのではないかと思われます。

 萎縮性胃炎はほとんどの場合、胃粘膜にピロリ菌が感染して長年にわたって炎症を持続した結果、胃粘膜が薄くなったような変化とお考えいただければよいと思います。程度は軽いものから重いものまでさまざまです。また、ピロリ菌は年齢が高くなるほど陽性率が高くなるのですが、おしなべて日本人の2人に1人はこの菌を持っております。

 萎縮性胃炎は胃がんに進むのかというご質問ですが、胃がんになった人のほとんどはピロリ菌が陽性であり、よって萎縮性胃炎を持っていることがほとんどといえるのですが、だからといって萎縮性胃炎が胃がんに進むという言い方は語弊があるとも思われます。

 2001年のデータでは、日本人の全年齢において胃がんのり患率は、10万人あたり、男性は約120人、女性は約55人です。ピロリ菌感染者は10万人につき約5万人いることになりますので、その割合を考えていただければと思います。ただ、ピロリ菌が陰性の方は胃がんになる確率はかなり低いともいえ、胃がんは、なりやすい方とそうでない方とをある程度分けることができることも事実です。つまり、ピロリ菌が陽性で萎縮性胃炎が高度である方は、胃がんになる確率が高いという言い方も可能なわけです。

 食事などで回復させることはできるかとのご質問ですが、ピロリ菌の感染は持続的で、自然に消えることはほとんどありません。除菌方法としては、3種類の薬を1週間服用すれば、8割程度消失するというのが一般的ですが、この方法は胃潰瘍(かいよう)や十二指腸潰瘍の患者さんにのみ保険適応となっております。ピロリ菌感染のみの方(萎縮性胃炎の方)は保険適応になっておらず、除菌による胃がんの予防効果についても明らかにはなっていません。

 検査間隔については、一般的にがん検診は年に1回が適当と思われます。胃がんは、胃透視を年1回行うのが一般的ですが、ピロリ菌が陽性で萎縮性胃炎が高度な方などは、胃カメラを年に1回行う方法でもよいかと思われます。

 生活面で注意することとしては、まずは、ストレスを避けることが大切と思われます。ストレスにより胃の筋肉が収縮し血流も悪くなり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍ができやすくなります。ひいては、胃がんの発生にも関係するのではとも推測されています。また、暴飲暴食や喫煙もよくありません。規則正しい生活を心掛けることが肝要と思われます。

徳島新聞2008年10月12日号より転載

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