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【質問】 夏の終わりにふけが増える

 24歳の女性です。もともとふけ症なのですが、毎年夏から秋の季節の変わり目に、ふけの量が増える気がします。シャンプーを変えても、なかなか変化がありません。皮膚科で診てもらった方がいいのか悩んでいます。飲み薬や塗り薬でふけの量は減らせるのでしょうか。また、食べ物との関係があれば教えてください。



【答え】 脂漏性皮膚炎 -正しい治療とケアが重要-

きたじま田岡病院 皮膚科 森田 奈緒子(板野郡北島町鯛ノ浜)

 皮膚の表面は角質で覆われていますが、頭皮からはがれ落ちた角質の固まりが、ふけと呼ばれるものです。これは、角質の入れ替わりとともに、誰でも多少は生じるものです。これが多くなり過ぎた状態が、一般にいうふけ症です。

 ふけには大きく分けて、パラパラと落ちる乾性のものと、黄色調でベタベタした湿性のものがあります。乾性のふけは、頭皮の乾燥だけでも生じることがあります。湿性のふけは、皮脂が多く分泌されるところに生じやすいふけです。

 湿性の中には、頭皮の炎症を伴い、脂漏(しろう)性皮膚炎の状態になっているものが、かなりの割合で存在します。脂漏性皮膚炎とは、皮脂腺が発達した頭皮や顔面に生じる皮膚炎です。皮脂の分泌量には、個人差や年齢差、性別差があり、ほかにも、温度や湿度などの環境、生活習慣、食生活、ストレスなどが関係します。

 また、脂漏性皮膚炎の原因の一つとして、正常な皮膚にも存在するカビ・皮膚常在真菌(マラセチア菌)の関与が明らかになっています。

 マラセチア菌は、皮脂が多い場所で増える性質があります。増殖し過ぎたマラセチア菌が皮脂中のトリグリセリドを分解して生じた遊離脂肪酸や、酸化した皮脂自体などが刺激となり、脂漏性皮膚炎の原因になると推測されています。一度脂漏性皮膚炎になると、皮膚の炎症によって角質の入れ替わりが亢進(こうしん)し、過剰な角質が多量のふけとしてはがれ落ちることになります。脂漏性皮膚炎を生じた場合には、頭皮の炎症を抑える塗り薬や、過剰繁殖した真菌を抑える抗真菌薬、またこれら2つを組み合わせた外用治療が中心となります。

 また、抗真菌薬配合のシャンプーが効く場合もあります。シャンプーの際には、擦り過ぎることは逆効果で、よく泡立てて指の腹で優しく丁寧に洗いましょう。1日に何度も洗うなど洗髪のし過ぎは、頭皮の乾燥を招き、かえってふけが出やすくなることがありますので注意してください。

 食生活など生活上の注意に関してですが、ビタミンB2、B6は皮脂分泌を調整する働きがありますので、これらの内服をしたり、これらを含む豆製品、緑黄色野菜食品、魚、豚肉などの赤身やレバーを積極的に摂取したりすることで補助的な効果が得られることもあります。

 アルコールや刺激物など皮脂分泌を進ませるものや高脂肪な食物は取り過ぎないほうがよいでしょう。過労やストレス、睡眠不足も皮脂分泌を進ませますのでなるべく避けましょう。

 非常に高度で難治な脂漏性皮膚炎の場合、尋常性乾癬(かんせん)などの炎症性角化症の現れであることもあります。もしご自身でできるケアで改善しないようでしたら、一度皮膚科でご相談されるとよいかと思います。

 皮脂分泌量には個人差があり、皮脂が多いという体質自体は個人の特徴として存在するものです。しかし正しい治療とケアによってふけの量を減らしたり、脂漏性皮膚炎になることを防いだりすることは可能と考えます。

徳島新聞2008年10月5日号より転載

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