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【質問】 体中に皮疹出て治らない

 40代の女性です。尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)の皮膚病で悩んでいます。最初に見つかったのは、30過ぎのころ。わきの下の皮膚がかゆくなり、かくとふけ状の粉っぽいものが落ち、そのうちソフトボール大に肥大化して太ももの裏側やおへそなど、ありとあらゆるところにできてしまいました。病院で診てもらってステロイド軟こうをぬっていますが、毎日塗らないとかゆくなるし、症状は悪化する一方です。紫外線をあてましたが、正常な皮膚の部分が赤い湿疹(しっしん)になり、かゆくて治療を中断してしまいました。伝染しないと言われましたが、温泉に行くのも気を使います。乾癬は一生上手につきあっていく病気と言われましたが、このまま治らないのでしょうか。



【答え】 尋常性乾癬 -治療法発展医師と相談を-

徳島大学病院 皮膚科助教 山本 忠正

 尋常性乾癬についてですが、この病気は典型的な皮膚の症状から比較的診断は容易です。症状はまず頭部やひじ、ひざから始まることが多く、紅斑(こうはん)と、落屑(らくせつ)=ふけ=がみられます。その後、体や四肢にも生じてきます。

 体や四肢に生じた病変は境界が明りょうで、赤くわずかに隆起しています。その表面に白色のふけが固まったような鱗屑(りんせつ)が付着しています。多くは左右対称であり、病気の勢いが強いときはわずかな外傷や掻破(そうは)によっても新しい皮(ひ)疹(しん)が生じます=ケブネル現象。病院で診てもらって乾癬といわれているなら、まず間違いないでしょう。

 乾癬は3種類に分けられます。尋常性と関節痛を伴う関節性、膿(うみ)を伴う膿疱(のうほう)性ですが、90%以上が尋常性乾癬です。なぜ乾癬になるのか。病因についてはさまざまな研究が進んでいますが、現在のところははっきりしていません。ただ一ついえるのは、乾癬にはまったく伝染性がないことです。

 「乾癬は治らないのでしょうか」との質問ですが、病因が分かっていないためどちらかといえば慢性に経過しやすいといえます。しかし、皮疹がまったくなくなる患者さんは30~70%おり、長期間皮疹が出ない人や自然に消失される人もまれではありません。特に50代をピークに、それ以降は徐々に患者数は減少しています。

 乾癬の治療法は目ざましい発展を遂げています。現在では、特殊なビタミン剤のエトレチネートや免疫抑制剤シクロスポリンなどを服用する内服療法、ステロイドやビタミンD3軟こうなどを塗る外用療法、紫外線のPUVAやUVBなどを照射する光線療法の3つがあり、患者さんの症状や通院できる間隔などを考慮していろいろ組み合わせて治療します。それぞれに長所・短所があり、医師とよく相談の上、決めるのがよいと思います。

 この中でも最近、注目を集めているのは、光線療法です。以前はPUVA療法が主流でしたが、最近はUVBの中の一部分の波長である311nmを取り出して照射するナローバンドUVB療法が行われ始めています。

 効果はかなりの割合で期待できますが、短所もあります。それは機械が高価なため利用できる施設が少ないこと、通院回数が週に2~3回必要となること、回数の増加に伴い日焼けを起こし肌の色が黒くなることです。相談の人は既に紫外線をあてたとのことで、この治療法を受けたのであれば別の手段を考えないといけません。

 現在臨床試験が行われているところですが、開発中の抗TNF-α薬は約2週間に1回、皮膚に注射するだけで効果があり、今後の期待が高まっています。日常生活では特に注意する点はありませんが、高カロリーを控え、バランスのよい食事とストレスをためないことが重要です。

 最後に、上手に付き合っていく病気には糖尿病や高血圧などがありますが、乾癬は皮膚の症状が主体であり、人目が気になることが一番の苦痛であることはよく分かります。よい時期、悪い時期と波があることが多く、お肌の手入れとともに皮疹がなくなる時期が長くなるような自分に合った治療法を見つけましょう。

徳島新聞2007年7月29日号より転載

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