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【質問】 足がしびれるほどの腰痛

 腰痛で悩む40代の主婦です。若いころから腰痛はありましたが、大したことはありませんでした。先日、農作業の手伝いをしている時に腰痛がひどくなり、足がしびれるようになりました。インターネットで調べると座骨神経痛らしく、歩くことはできますが、顔を洗うときなどはとてもつらいです。整骨院に1カ月通いましたが、いっこうによくなりません。治療法はありますか? 生活する上での注意点と併せて教えてください。



【答え】 腰椎椎間板ヘルニア -圧迫程度で治療異なる-

村田整形外科医院 院長 村田 豊(徳島市鮎喰町2丁目)

 年齢が40代と若いこと、腰痛とともに下肢のしびれがあり、腰を曲げると強くなることなどから、「腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア」により引き起こされた「座骨神経痛」と考えられます。下肢の痛みもあるのではないでしょうか。

 腰椎は背骨(脊椎=せきつい)の腰の部分で、5個の椎骨からできています。その椎骨と椎骨の間にある軟骨が椎間板です。椎間板は弾力性に富み、クッションの役目をしています。その中心にある髄核が膨らんだり飛び出したりするのが「椎間板ヘルニア」で、それが神経を圧迫すると「座骨神経痛」を起こします。

 症状は腰痛、下肢の痛みとしびれです。ひどい場合には神経がまひしたり、ぼうこうや直腸の障害が起こったりします。ひざを伸ばした状態で腰を前に曲げたときに痛みが強くなりますが、この人には典型的な症状が出ています。

 診断を確実にするにはレントゲン検査だけでは不十分で、MRIという磁気を用いた検査が必要です。この検査でヘルニアがどんな場所にあり、どの程度神経を圧迫しているかが分かります。その結果で治療法も変わってきます。

 ヘルニアが軽度の場合、まずは安静ですが、腰を温めたり牽引(けんいん)したりする物理療法、鎮痛剤(飲み薬、張り薬)などの薬物療法を行います。腰を固定するコルセットや体操(腰痛体操)をするのも効果的です。

 中程度のときは、ブロックという注射がよいでしょう。硬膜外ブロックと呼ばれるものが中心です。整形外科やペインクリニックの専門医であれば、安全に受けられます。

 症状が進んだヘルニアの場合は、手術も考えなければいけません。脱出した髄核を外科的に摘出する方法で、代表的なものとして「ラブ法」というものがあります。しかし最近、大きく飛び出したヘルニアが自然になくなってしまう現象が多く報告されており、ケースにもよりますが、3~4カ月は手術以外の方法を選択するのが主流になっています。

 椎間板ヘルニア以外にも腰や下肢の痛みを起こす疾患はあります。例えば、腰部脊柱菅狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)は、背骨の中にある脊髄を保護する脊柱が加齢などによって細くなり、中の神経組織を圧迫します。みのもんたさんが手術を受けたことで有名です。

 これは主として高齢者に多くみられ、椎間板ヘルニアが腰を曲げたときに症状が強くなるのと反対に、腰をそらしたときに痛みが出て腰を曲げると軽くなります。また、歩いたときなどに痛みが出て、休むと楽になるのも特徴です。ほかにも多くの疾患が考えられますが、いずれにしても一度、整形外科で正確な診断を受けることをお勧めします。

徳島新聞2007年7月22日号より転載

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