徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 68歳夫が頻繁に物忘れ

 68歳になる夫が最近、頻繁に物忘れをするようになりました。時間や場所が分からなくなるときもあるようです。本人は意識していないようなのですが、何度か同じことを言うときもあります。受診を勧めても「大丈夫」と言って行きません。頭痛の回数も多くなってきているようで、認知症ではないかと不安です。病気のせいか、年のせいか、見分ける方法があるのでしょうか。何科を受診すればよいのですか。



【答え】 認知症 -脳障害も考慮し早期受診を-

城西病院 植村 桂次(徳島市南矢三町3丁目)

 認知症の共通した症状として▽同じことを聞く▽時間や場所が分からなくなる▽物の使い方が分からなくなる▽近所で道に迷う▽物の名前が出にくくなる-などが挙げられます。一部の人には▽物事への関心が薄くなる▽目的もなく歩き回る▽不機嫌で怒りっぽくなる▽「物を盗まれた」とか実際にはない物が見えると訴える-といった症状も見られます。

 最初に気付くのは、やはり「物忘れ」が多いようです。具体的には、何回も同じことを聞いたり、置き忘れなのに「物がなくなったのは誰かに取られたため」と訴えたりします。比較的早期から見られる症状としては、時間や場所が分からなくなります。症状が進行すると、このことに対して自覚が乏しくなったり無くなったりします。

 相談内容をまとめると<1>物忘れが頻繁になっている<2>時間や場所が分からなくなる<3>そのことに対して本人の自覚がみられない-ということです。これらの症状を考えると「年のせい」とするには問題が残ると思います。結論からいうと、認知症を疑って対応された方がよいと思われます。

 ただ、一言で認知症といっても、認知症を引き起こす原因はさまざまです。アルツハイマー病を代表とする脳細胞の変性疾患、予防が重要とされている脳血管障害、治療が可能といわれている正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などの外科的疾患、甲状腺機能低下症などの代謝性疾患、脳炎・髄膜炎などの炎症性疾患など、列挙すれば切りがないほどです。

 受診する医療機関を迷っておられるようですが、最近は徳島県の研修活動として「かかりつけ医認知症対応力向上研修会」が開催され、かかりつけ医の認知症診断に対する知識や技術が向上しています。まず、かかりつけ医に相談してみてはどうでしょう。必要であれば認知症サポート医をはじめ、専門医を紹介してくれると思います。かかりつけ医から勧められると、比較的抵抗なく専門医の診察が受けられることが多いようです。

 また、徳島市では基本健康診査での認知症の早期発見・早期治療を目指して「もの忘れ検診」を行っています。自己負担金はありません。基本健康診査を受ける際に、それとなく勧めてみてはいかがでしょうか。ただ「もの忘れ検診」は対象者が限られており、利用できるのが基本健康診査の期間中なので、注意してください。

 家族が、年のせいなのか、それとも病気なのかを見分けるのは難しいことですが、一つの方法として、最近一緒に出掛けたことがあるならば、そのことを本人に聞いてみると区別が付くかもしれません。全く覚えていなくて話がかみ合わないとなると、認知症を疑った方がよいと考えられます。ただ、覚えていなくても、聞き方によっては「うん、そうだったね」と答えられる場合があるので、やはり医療機関で確認された方がよいと思います。

 質問の「最近、物忘れが頻繁になった」「頭痛の回数が多くなった」という内容からは、脳の障害や炎症性疾患なども考慮すべきかと思います。これらが原因であれば治療が可能と考えられますし、また、どの認知症においても早期治療が重要ですので、できるだけ早い時期に受診されることをお勧めします。

徳島新聞2007年4月1日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.