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【質問】 3年間で骨密度が減少

 66歳の女性です。5年前に骨密度を測ったとき、同年比較で120%、若年成人比較で99%でした。当時は数年前からエストロゲンホルモン剤を服用していました。3年前に測ったときは標準で、以後エストロゲンの服用をやめてしまいました。現在は68%で、骨には異常がないものの骨粗しょう症気味で、軽度のひざ関節症のようです。骨量がわずか数年で減少することに驚いています。再びエストロゲンホルモン剤を服用した方がよいのでしょうか。また、筋力をつけるために数年前から太極拳をしているのですが、ひざや足首のためにはよくないのでしょうか。



【答え】 閉経後骨粗しょう症と女性ホルモン

-状況に応じて治療法選択-


だいとうレディースクリニック 大頭敏文(鳴門市撫養町大桑島)

 女性ホルモンは、女性の健康に深く関与していることが知られています。女性は閉経を迎えると、卵巣の働きが低下して女性ホルモンが急に少なくなります。

 そのため、更年期障害や膣(ちつ)炎、頻尿、高脂血症、乾燥肌などの症状が現れます。さらに、女性ホルモン、特にエストロゲンは骨を守る働きがありますが、閉経後はエストロゲンの低下によって骨の吸収が高まり、急速に骨量が減少します。

 閉経後骨粗しょう症とは、女性ホルモンの低下と加齢によって骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。閉経期以降の女性4人に1人が骨粗しょう症であるといわれています。

 骨粗しょう症の診断には骨量の測定が必要です。原則として、腰椎(ようつい)の骨密度を測定し、若い人(20~44歳)の平均骨密度(YAM)と比較して70%未満であれば骨粗しょう症と診断されます。閉経後は、年齢相当でも骨量が減少していることになるので注意が必要です。

 質問では、エストロゲンの使用を中止してから急に骨量の低下が認められ、既に骨密度が68%となっているので、骨粗しょう症と診断されます。骨折の予防のためにも治療が必要です。

 骨量を増加させる薬は、以前はエストロゲンと注射剤のカルシトニンのみでした。しかし最近では、強力な骨吸収抑制剤であるビスフォスフォネートや、骨にはエストロゲンとして働くラロキシフェンが出てきました。

 エストロゲンは女性の若さを保つホルモンとして、1960年代に導入されました。その後、エストロゲンだけでは子宮内膜がんが増加することが分かり、現在は黄体ホルモンと併用することで内膜がんの発生を防いでいます(ホルモン補充療法)。

 更年期障害や頻尿、膣炎などの泌尿生殖器症状を伴った人であれば、骨粗しょう症の治療としてホルモン補充療法が第一選択になります。閉経後、早期にホルモン療法を始めると心筋梗塞(こうそく)などの冠動脈疾患も減少しますが、動脈硬化のある70歳以上から始めると逆に増加します。その他の注意点としては、乳がんと静脈血栓症があります。乳がんや喫煙、血栓症の既往がある人などは、ホルモン療法ではなく他の薬剤が適しています。

 エストロゲン剤にも種類があり、さらに投与量による効果の違いもあります。現在の状況に応じて治療法を選択することが重要と思われます。

 適度な運動も骨折の予防として非常に効果的なので、無理のない範囲で太極拳を続けてください。

徳島新聞2007年3月25日号より転載

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