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【質問】 白血球数の低下に不安質

 34歳の女性です。8月に人間ドックを受けた結果、昨年は血液1マイクロリットル(1,000分の1ミリリットル)中に3,100個だった白血球の数値が、2,600個にまで低下していました。何か病気と関係があるのでしょうか。ちなみに2カ月前からリウマチの薬(リマチル)を服用しています。



【答え】 好中球減少症 -定期的に血液検査受け、加療を-

おかがわ内科・小児科 岡川 和人(徳島市住吉1丁目)

 健康診断や人間ドックで白血球が少ないことを指摘され、気にして来院される方は結構おられます。

 白血球の正常範囲は、血液1マイクロリットル当たり3,500~9,000個くらいでしょうか。しかし、それ以下の数の健常者が多くいることもまた事実です。

 白血球には、好中球、リンパ球、単球、好塩基球、好酸球がありますが、末しょう血白血球の大半は好中球とリンパ球が占めています。一部の免疫不全症ではリンパ球減少が問題となりますが、白血球減少の大部分は好中球減少によるものと考えていいと思います。

 好中球の絶対数が血液1マイクロリットル当たり1,500個以下になった状態を、好中球減少症と定義しています。さらに、500個以下になると「無顆粒(かりゅう)球症」として特別に扱っています。好中球は顕微鏡で見ると顆粒がたくさん見られ、顆粒球とも言われます。

 無顆粒球症になると、感染症が予防できなくなります。咽頭痛で発症し、悪寒戦慄を伴う高熱が続きます。入院が必要ですが、好中球数が回復するまで約2週間を要することになります。しかし、現在はG-CSF(好中球増殖因子)という特効薬が開発され、かなり予後が改善されています。原因の大半は薬によるものですので、薬剤に注目します。

 ご相談の方は、リマチルという抗リウマチ薬を飲んでいます。その頻度は少ないですが、重大な副作用として、好中球減少があります。担当の先生もそのことはご存じと思いますので、定期的に受診され、血液検査をしながらリウマチの加療をお続けください。昨年、治療前にすでに3,100個という白血球減少状態がありますので、副作用としての白血球減少ではないと考えます。

 では、リウマチ自体との関連はどうでしょう。教科書的には、関節炎という炎症症状がひどくなると白血球は増えると記載されています。しかし、少ない方も見られます。特に脾腫を伴うリウマチは、白血球減少を伴う疾患として有名です。

 膠原病という疾患群があります。多くは白血球減少を伴います。リウマチも実はこの膠原病群の一つです。リウマチを引き起こす原因病態の一つとして白血球減少があるとも考えられます。

 白血球(特に好中球)の減少をきたす病気は、大きく2つ考えられます。一つは、骨髄での産生が低下する病気。例えば、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、急性白血病、多発性骨髄腫、巨赤芽球(きょせきがきゅう)性貧血、がんの骨髄浸潤などです。このときは、赤血球や血小板も減少していると思います。

 もう一つは、好中球の異常破壊もしくは脾臓への貯留が高進する病気。例えば、薬剤起因性無顆粒球症、ウイルス感染症、肝硬変、粟粒結核、膠原病(全身エリテマトーデスなど)といった病気です。

 以上、好中球が減少する病気はいろいろあります。白血球が少ないということで、いろいろな病気の発見につながることもありますが、むしろ異常がなく心配いらないことのほうが多いと思います。白血球数のみでなく、その他の検査結果などが参考になりますので、やはり専門の医師の診断も必要でしょう。

徳島新聞2006年9月17日号より転載

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