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【質問】 飲み込みにくく口が乾く

 41歳の女性会社員です。最近、食べ物が飲み込みにくくなったり、口の中が乾いたりするような感じが強くなりました。どこに行くにもペットボトルを持ち歩いています。食事のときも、水分を多く取るようになった感じもします。周囲から「ドライマウスではないか」と言われたことがありますが、乾ききってはいません。私のような症状でも、ドライマウスなのでしょうか。ちなみに、これまで特に病気にかかったことはありません。原因や対処法について教えてください。



【答え】 咽喉頭異常感症 -のどの病気の有無確認を-

高石司耳鼻咽喉科 高石 司(徳島市城東町)

 質問にあるドライマウスから説明します。

 ドライマウスとは唾液(だえき)の量が減少することによって口の中が乾燥する状態です。唾液が減少する理由には<1>唾液を作る能力は正常だが体の水分が減ってしまった状態<2>唾液を作る能力が低下した状態-が考えられます。<1>は糖尿病や尿崩症など尿が多過ぎる病気、<2>は加齢、降圧剤や安定剤、抗アレルギー剤などの薬の副作用、またシェーグレン症候群という免疫異常の病気が考えられます。

 ところで質問には「口の中が乾くような感じが強くなってきた」とありますが、実際、唾液の量が減少しているかどうかが問題となります。簡便な方法としてガムテスト(ガムを10分間かんで出てきた唾液の量が10ミリリットル以下かどうかで判定)で唾液の量を量ります。

 一方で「乾ききっていない」との表現があることから、乾いた感じがしているだけなのかもしれません。それでは、唾液量が正常な場合に「食べ物が飲み込みにくくなった」と感じる原因はどこにあるのでしょうか。

 のどの奥から食道の入り口、気管に入るまでの部分を咽喉頭部と呼んでいます。この咽喉頭部はとても敏感な場所です。患者さんは「ひっかかった感じ」「飲み込みにくい」などさまざまに異常感を訴えられます。診察させてもらうと、多くの場合はこれらの訴えに見合った変化が見られます。まれに悪性腫瘍が発見されることもあります。

 しかし、十分な検査をしても患者さんの訴える咽喉頭部に原因となる病変がないことがあります。この場合、咽喉頭異常感症と呼びます。

 咽喉頭異常感症を起こす原因となる病気には、慢性副鼻腔炎や慢性扁桃炎など、患者さんの訴えているのと少し離れた場所に慢性の炎症があることがあります。最近は逆流性食道炎(胃の内容物が食道を逆流するために胸やけやせきが起こる)が、咽喉頭異常感症との関係で注目されています。また、喉頭アレルギー(アレルギー性鼻炎や喘息と同様の考え方から想定されている)も、見たところ必ずしもはっきりとした異常がなく、咽喉頭異常感症として扱われます。首の骨や甲状腺の異常、さらに全身疾患の貧血や糖尿病も咽喉頭異常感の原因になります。精神的なストレスでも起こります。

 結論としては「食べ物が飲み込みにくくなった」と訴えられていますので、まずは耳鼻咽喉科の受診を勧めます。重大な病気があるかもしれません。咽喉頭部に病変が見えない場合(咽喉頭異常感症)は内科的検査をさらに受けられるか、下咽頭癌など発見の難しい悪性腫瘍も疑い、経過を見てもらうことが必要と思います。また、現実に唾液の分泌が減少している場合は唾液の分泌量を増やす治療が必要となります。

徳島新聞2005年5月1日号より転載

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